ACTH治療とはなんですか?
主に点頭てんかん(ウエスト症候群)に対する代表的な内科的治療です。ACTH(アクス)と一般的に呼ばれていますが、その本体は副腎皮質刺激ホルモンです。
治療方法は筋肉注射です。注射部位は、乳幼児では大腿外側中央部(太ももの横側)が多く選択されます。注射の際はすこし痛みを感じますが、治療自体は、およそ10秒以内で終わります。
ACTHはもともと生体内で作られているもので、下垂体前葉のACTH産生細胞から前駆物質を経て産生、分泌されます。ACTHの合成、分泌は主に視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により調節され、ACTHは副腎皮質から糖質コルチコイドを含むすべての副腎皮質ホルモンの分泌を促進します。
ACTHは、点頭てんかん(ウエスト症候群)だけでなく、その他の全般てんかん(Lennox Gastaut症候群)やCSWS関連てんかん(徐波睡眠時に持続性の棘徐波をみとめるてんかん)などにも用いることがあります。
ACTHがなぜてんかんに効くのですか?
ACTHがなぜ、点頭てんかん(ウエスト症候群)に効果があるかは、はっきりしたことはわかっていません。
ACTH自身の神経への直接作用、ステロイド増加による受容体を介した作用、電位依存性Caチャネルへの作用、神経興奮作用のあるCRH低下による作用、GABA受容体へ作用する神経ステロイドの増加の可能性が言われています。
ACTHの治療はいつ始めて、いつまでするのですか?
日本てんかん学会が作成したウエスト症候群の治療ガイドラインには、点頭てんかん(ウエスト症候群)の治療に最も有効なのはACTHであり、点頭てんかん(ウエスト症候群)発症後出来るだけ早く使用すべきで、原因の明らかでない点頭てんかん(ウエスト症候群)については、1ヶ月以内が望ましいと記載されています。
また、副作用を軽減するために、可能な限り少量、短期間の投与が推奨されるとなっています。投与量や投与期間については施設間で異なりますが、2週間連続で使用する方法や、1日おきに使用する方法などが一般的で、その後回数を減らしたり、中止したりします。2週間で効果がない場合は、増量や延長などができます。
ACTHに副作用はありますか?
副作用は以下に示すものが生じる可能性があります。
《ほぼ必発》
易感染性、浮腫・体重増加・満月様顔貌、不眠・イライラ・活気低下
《時に》
色素沈着・ざ瘡、低カリウム血症、高血糖、血圧上昇、可逆性の脳退縮、肝障害、眼症状
《稀だが重篤》
ショック様症状、重篤な感染症、硬膜下水腫・血腫、心肥大・不整脈
これらの副作用をモニターするために、治療中は複数回の検査を行い、予防薬(抗生剤、胃薬など)などを使用することがあります。稀だが重篤な副作用は、特に集中治療や手術治療が必要になることもあり、稀ですが命にかかわることがあります。
ウエストの再発が認められた場合、再度ACTHの治療を行う事は一般的にありますか?
ウエスト症候群発症後、ACTH治療が効き、2年間発作が服薬のみで抑えられましたが、再度ウエストっぽい頭がガクッと下がる様な発作が1日に何度も起こる様になりました。
一般的に初回のACTHが効果があったということであれば再トライを検討する価値はあります。初回のACTHが無効であった方は2回目のACTHは効きにくいことが多い印象を受けますが年齢を重ねると効果が出ることも時に経験します。
ACTH以外のお薬やてんかんの手術など、候補となる治療の選択肢、原因として何が考えられるのか主治医の先生としっかりお話しした上で次の選択肢を検討されるのがよいと思います。
現在ACTH治療中です。人格が変わったかのようにイライラが激しくなりました。退院してからこのイライラは無くなるのでしょうか?
ACTH治療中は種々の副作用が出現し、その中で、抑うつ症状や興奮、 易怒性といった精神的な変調を来すことも一定の割合であります。 ACTH治療の副作用は、一般的にはACTH治療を終了すると徐々に軽減していきます。
ACTH治療に伴うイライラも比較的よくみられる副作用で、 基本的にはACTH治療が終了すると軽減していき、数週間以内には落ち着く ことが多いですが、症状の程度が強く、本人の負担が大きい場合には、 イライラを軽減する漢方薬などを服用することもあります。
発作の消失や、 脳波異常が著明に改善することで、興奮状態になる方もおられますが、 稀な現象です。
イライラの程度が強く、ACTH療法終了後も症状が変わらず 続くような場合には主治医の先生とよくご相談ください。
現在ACTH治療中ですが、一週間で発作は無く、脳波検査も良くなっています。 もう一週間治療をした後、状態が良ければ内服薬はすぐに 辞めても良いのでしょうか。それとも徐々に辞める方が良いのでしょうか。
ウエスト症候群 生後6ヶ月 ACTH治療中
ウエスト症候群(乳児てんかん性スパズム症候群)にACTH療法が大変効果があったということですね。一般的にACTH療法で発作が消失した場合、抗てんかん発作薬は整理し、すくなくとも1剤は内服を継続することが多いですが、副作用が強い場合は内服中止も検討してもよいかと思います。
注射終了時の脳波所見、ウエスト症候群の原因によるところもありますので主治医の先生とよく相談するようにしてください。