てんかん外科(手術)の概要

はじめに

外科手術によりてんかん発作が緩和、あるいは消失する場合があります。てんかん発作が頻発した患者さんが、外科手術により発作が消失し、日常生活の質が驚くほど改善することがあります。 このページではてんかん外科についての概要を解説していますので、ぜひ参考になさってください。 また、3つの手術の詳細については別ページ「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」で解説しています。

いつ、てんかん外科を考えたらよいですか? 

■一般的な難治てんかんの場合

2−3種類の適切な抗てんかん薬を使用しても発作が1年以上抑制されない難治性てんかんの場合、てんかん外科を考える一つのタイミングとされています。

下の図にあるように通常3剤目までで発作がコントロールできる方は60-70%程度、それ以外の方は抗てんかん薬では発作コントロールが難しいと言われています。

てんかんの発作の頻度が多く、てんかん罹病期間が長いと、精神運動発達、学習面・情動面、そして日常・社会生活に大きな影響を与えます。

てんかんの中には、脳波の乱れ自体が発達に及ぼすてんかん性脳症と呼ばれるてんかんの一群があります(点頭てんかん(ウエスト症候群)など)。この場合、発達過程にある「こどもの脳」を守るために、より早い段階でてんかん外科を検討する必要があります。

てんかん外科手術を受ける基準にはどんなものがありますか?

 てんかん外科を考える際には下記について十分に理解した上で検討することが大切です。

1)てんかんの診断(発作、症候群分類)について

今一度、てんかん発作の種類、てんかん焦点の場所、てんかん症候群、原因について理解を整理する必要があります。

上記は整理をする上での項目例です

てんかん外科手術にはどんな種類がありますか? 

てんかんの外科手術は「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」の3つあります。

それぞれの詳細は以下のページをご覧ください

症例に応じててんかん外科を選択する必要があります。

■焦点切除が検討できる例(必要に応じて電極留置を検討)

■半球離断などの離断を検討する例

■脳梁離断を検討する例

てんかん外科を検討するためには、どのような検査が必要でしょうか? 

治療方針を決めるために、以下の精密検査を行う場合があります。検査によっては入院が必要です。以下のような検査を行うことがあります。

■ 長時間ビデオ脳波

ビデオ撮影しながら脳波記録を行う検査です。発作の頻度によっては、抗てんかん薬を減薬し、半日から数日間行います。

■ 頭部MRI・CT

脳の構造を見る検査で、てんかんの原因とてんかん焦点の検索を行います。通常の撮影法に加えて、てんかん外科を目的とした特殊な撮影法を必要とします。

また、症例に応じて以下の検査を行うこともあります。

てんかん外科の流れについて教えて下さい

入院から手術までの一般的な流れは以下のとおりです。詳しくは「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」それぞれのページをご覧ください。

 

 

退院後数日は自宅で様子を見てください。
その後は学校へ行ったり、普段の生活をしても構いません。

外科治療をすることによる合併症はどのくらいの割合で起こりますか?

てんかん外科(手術)をすることによる合併症の可能性は、神経学的後遺症、術後出血、感染、髄液循環障害など、一般的に3〜5%程度と言われています。

具体的な症状は「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」それぞれの手術のページをご覧ください。

丸坊主は必要ですか?

丸坊主は必要ありませんが、相談させていただくこともあります(頭部に直接処置を行わない迷走神経刺激療法はのぞく)。

傷口はどの程度残りますか?

髪の毛のある部分しか切りませんので、髪の毛が生えればほぼわからなくなります(頭部に直接処置を行わない迷走神経刺激療法はのぞく)。

開けた頭蓋骨はどのくらいで戻りますか?

術後時間をかけて吸収される素材で骨同士をしっかり固定し、3ヶ月ほどで開頭した部分は骨が再生されます(頭部に直接処置を行わない迷走神経刺激療法はのぞく)。

術後痛みはどの程度ありますか?

痛みは2〜3日程度続きます。痛み止めでやわらげます。

手術後の安静は必要ですか?

翌日から動いても構いません。頭蓋内電極留置をする場合は1〜2週間は安静が必要です。

運動(体育)スポーツはできますか?

運動は術後1ヶ月から構いません。激しいスポーツは3ヶ月後から、ボディコンタクトがあるスポーツ(サッカーやラグビー)や格闘技については、相談が必要です。主治医と相談してください。

外科治療が発達に影響することはありますか?

てんかん外科治療後に、運動・食事・言葉などの面で、できていたことができなくなる場合があります。小児言語科、リハビリテーション科では、術後早期から患者さんの状態を評価し、訓練を開始しています。

状態を詳しくチェックし、「ちょうどギリギリできること」を多く繰り返すことによって、もう少し難しいことができるようになります。これを繰り返すことで、回復を促進していきます。(頭部に直接処置を行わない迷走神経刺激療法はのぞく)

左側頭葉の手術をしていただきましたが再発してまた切り開く事が不可能です。どうなるのでしょうか?

左側頭部の手術をされ、残念ながら切除した付近のところから脳波異常、発作が出ているということですね。まずは根気強く内服調整を継続することになるかと思いますが、てんかん外科の進歩により、詳細な検討をした上で2回目の手術を受けることも状況によっては可能となります。よく主治医の先生とご相談し、追加の検査や今後の方針についてご相談ください。また最新のてんかん外科を行っている施設にセカンドオピニオンに行くこともご検討ください。

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