1. 病変・焦点切除術

病変・焦点切除術とはどんな場合に行う手術ですか?

病変・焦点切除術は以下のような場合に行います。

  • 発作の原因となっているところ(てんかん焦点)がわかっているとき
  • 画像検査で脳腫瘍や皮質異形成(脳のしわが生まれつきうまくつくれない病気)の場所がわかっているとき
  • 海馬硬化症(生まれつき、もしくは熱性けいれんが長く続き傷ついた状態)があるとき

病変・焦点切除術とはどんな手術ですか?

病変・焦点切除術は、発作の原因となっているところ(てんかん焦点)を切除したり、てんかん焦点が広汎に存在する場合は広く脳を離断(てんかん焦点を切除、摘出するのではなく、正常な脳組織との連絡を断ち切る)する手術です。

■切除の例

■離断の種類

半球離断:
片側半球に広範な病変がある際に半球全体を離断します。反対側の視野障害が生じます。反対側の手足の麻痺が出ますが、リハビリによってゆっくり改善することが多いです。術前の麻痺の状態、年齢によるので主治医としっかりお話しください。

前方離断:
片側半球の前方(前頭葉)に病変があると推測されるが、それ以上病変が特定できない場合に行います。一次運動野より前を離断する方法です(下図)。利き脳であれば術後、判断力・計画的な行動、言語機能の低下が生じることがあります。前方離断後に後方離断や半球離断へ進むこともあります。

後方離断:
片側半球の後方(頭頂葉、後頭葉、側頭葉)に病変があると推測されるが、それ以上病変が特定できない場合に行います。一次感覚野より後ろで離断する方法です(下図)。術後、両手を使った作業の低下が生じることがあります。反対側の視野障害が生じます。後方離断後に半球離断へ進むこともあります。

手術は、1回の手術と2回に分ける手術があります。1回の手術ではそれまでの検査結果や術中の脳波を用いて「病変・焦点切除術」のみを行います。2回にわける手術では、1回目の手術で脳の表面にシート状の電極や串状の電極を留置し手術を終了し、翌日以降個室でいつもの発作を記録したり、手足を動かすのに重要な場所を特定します。それらの検査結果をもとに1−2週間後に「病変・焦点切除術」を行います。

2回に分ける手術を検討する場合は以下のとおりです。

  • 明らかな画像異常がなく、発作の始まりの詳細な同定が必要なとき
  • 利き脳(※)から発作が出ているとき
  • てんかん焦点の近くに大事な脳の機能があるとき(手/足/顔の運動野、言語機能など)

(※参考)利き脳とは

病変・焦点切除術の流れを教えて下さい

1回で行う場合と2回に分ける場合でそれぞれ以下のとおりです。

■1回で行う場合

画像所見、頭皮上(場合によっては手術中)の脳波を参考に1回の手術で「病変・焦点切除術」を行います。

【入院期間】
手術前日もしくは2日前に入院し、経過が良ければ手術後7〜10日で退院できます。

【手術時間】
6〜10時間が目安です。加えて、全身麻酔導入や覚醒、術後検査などがありますのでお待ちいただく時間はさらにかかります。

■2回にわけて行う場合

2回にわける手術では、1回目の手術で脳の表面にシート状の電極や串状の電極を留置し、いつもの発作を記録したり、手足を動かすのに重要な場所を特定します。それらの検査結果をもとに1−2週間後に「病変・焦点切除術」を行います。

【入院期間】
1回目の手術の前日もしくは2日前に入院、1−2週間の記録、検査の後、2回目の手術へ進み、2回目の手術の後は2週間程度で退院となります。リハビリが必要な場合は長期の入院が必要となります。1ヶ月〜数ヶ月程度の入院が必要です。

【手術時間】
1回目(電極留置術):6〜10時間
2回目(焦点切除術):6〜10時間

 

「電極留置術」とはどんなものですか?

電極留置術は「病変・焦点切除術」を2回に分ける際の1回目に行う手術で、以下のような内容となっています。

■手術の内容

  • 脳の表面から直接脳波を記録するために電極がついた柔らかいシートを複数個、脳の表面に置きます。場合によっては串状の電極を用いることもあります。
  • 1回目の手術では、てんかん焦点の切除を含め、脳そのものの切除や処置は行いません。
  • 電極は使い捨てで再利用はしません。

■術後の流れ

術後、頭の皮ふは縫い合わせた状態でお部屋(手術当日は集中治療室)に戻ります。縫い合わせた皮ふの周囲から脳波を記録する細いコードが、数本〜10本程出ている状態になります。

通常は手術の翌日からビデオカメラが設置されている個室へ移動し、コードと脳波の機械をつなぎ、脳内の電極から詳細な脳波とビデオを同時に記録し、ふだんの発作を記録します。

■術後の入院生活

  • 入院中の介助と大きい発作が生じた際の対応が必要なためご家族の付き添いが必要となります。
  • 基本的にはベッド上安静が必要で、食事・着替え・排泄などすべてベッド上で行ってもらいます。
  • 発作症状によっては、同意の上ミトンやベストで身体拘束をすることがあります。
  • ご家族とお話をしたり、テレビを見たり、ゲーム、スマホなどの使用は可能です。
  • 1回目の手術の後は、頭痛、創部の痛み、気持ち悪さ、目の上の腫れがでます(数日でひきます)。

1回目と2回目の手術の間には何をしますか?

1回目の手術(電極留置術)の後から2回目の手術(病変・焦点切除術)までの1〜2週間間では以下のようなことを行います。

  • 発作時脳波の記録と解析:発作がどこから出て、どのように広がるかを調べます。
  • 運動野、感覚野、言語野などの特定:皮質電気刺激、言語課題、誘発電位検査など必要に応じて、組み合わせて施行します。
     

※発作時解析と切除部位の決定

病変・焦点切除術を受ける際の注意点はありますか?

病変・焦点切除術における合併症の可能性はありますか?

病変・焦点切除術を受けることによる合併症の可能性は、神経学的後遺症、術後出血、感染、髄液循環障害など、一般的に3〜5%程度と言われています。

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