脳梁離断術は

  • 大脳の左右の連絡の役割を果たす脳梁を離断(切り離す)ことで、てんかん波の広がりを抑える手術です。
  • 根治性(発作消失)は低い手術ですが、特定の病態(転倒、外傷を伴う発作)には非常に有効です。
  • 焦点切除術で問題となる麻痺や言語障害の出現はまれです。
  • 学童期までは通常、脳梁のすべてを離断する全脳梁離断、それ以上の年齢では前2/3(前方離断)もしくは全脳梁離断を行います。症例により異なりますので主治医より詳しくお話を聞いてください。
脳の左右をつなぐ脳梁を上からみた図「左右の脳の連絡を絶ち、発作の緩和、減少を図る」
脳梁の位置の図

目次:
1.どんな場合に脳梁離断術を行うのか
2.脳梁離断術で改善されること
4.脳梁離断術の流れ
5.脳梁離断術を受ける際の注意点
6.合併症について
7.外科手術に関するQ&A

どんな場合に脳梁離断術を行うのか

脳梁離断術は、以下に該当するような場合に実施します。

  • 左右のどちらかの脳にてんかん焦点があるか特定できない難治てんかん
    例:点頭てんかん(ウエスト症候群)、レノックス・ガストー症候群、脳炎・脳症後の難治てんかんなど
  • 転倒、外傷する発作が主体の難治てんかん

脳梁離断術で改善されること

脳梁離断術は、倒れる発作が主体のてんかんでは80-90%で有効と言われています。てんかん性スパズム、強直発作などの発作症状が軽減し、頻度が減少、発作持続時間が短くなることが期待できます。
発作が片側の大脳半球に限局することがあります。

脳梁離断術の流れ

■入院期間

手術前日もしくは2日前に入院し、経過が良ければ手術後7〜10日で退院できます。

■手術時間

3〜5時間が目安です。加えて、全身麻酔導入や覚醒、術後検査などがありますのでお待ちいただく時間はさらにかかります。

脳梁離断術を受ける際の注意点

脳梁離断術を受ける際は以下の点を留意しておく必要があります。

  • 発作の源(てんかん焦点)をとるわけではない(緩和的治療の一つ)
  • 脳梁を離断(切り離す)することでてんかん波の広がりを抑えますが、脳幹や視床など脳梁を介さない左右の連絡も多いのですべての広がりを抑えられるわけではありません。
  • 脳梁離断術後、脳波異常や焦点(部分)発作が片側によることがあり、その後焦点切除、各種離断術へ進めることがあります。
  • 合併症への理解

合併症について

脳梁離断術を受けることによる合併症の可能性は、神経学的後遺症(活気、食欲の低下、歩行不安定、半分の空間が意識にあがらない(半側空間無視、通常は一過性)、両手を使った動きが苦手になるなど)、術後出血、感染、髄液循環障害など、一般的に3〜5%程度と言われています。
通常、手足の麻痺や視野障害など大きな後遺症をきたすことはありません。

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