ACTH治療とは、主に点頭てんかん(ウエスト症候群)に対する代表的な内科的治療です。ACTH(アクス)と一般的に呼ばれていますが、その本体は副腎皮質刺激ホルモンです。

治療方法は筋肉注射です。注射部位は、乳幼児では大腿外側中央部(太ももの横側)が多く選択されます。注射の際はすこし痛みを感じますが、治療自体は、およそ10秒以内で終わります。
ACTHはもともと生体内で作られているもので、下垂体前葉のACTH産生細胞から前駆物質を経て産生、分泌されます。ACTHの合成、分泌は主に視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により調節され、ACTHは副腎皮質から糖質コルチコイドを含むすべての副腎皮質ホルモンの分泌を促進します。
ACTHは、点頭てんかん(ウエスト症候群)だけでなく、その他の全般てんかん(Lennox Gastaut症候群)やCSWS関連てんかん(徐波睡眠時に持続性の棘徐波をみとめるてんかん)などにも用いることがあります。
目次:
1.なぜてんかんに効くのか
2.いつ始めていつまでするのか
3.副作用について
4.ACTH治療に関連するQ&A
なぜてんかんに効くのか
ACTHがなぜ、点頭てんかん(ウエスト症候群)に効果があるかは、はっきりしたことはわかっていません。
- ACTH自身の神経への直接作用
- ステロイド増加による受容体を介した作用
- 電位依存性Caチャネルへの作用
- 神経興奮作用のあるCRH低下による作用
- GABA受容体へ作用する神経ステロイドの増加
の可能性が言われています。
いつ始めていつまでするのか
日本てんかん学会が作成したウエスト症候群の治療ガイドラインには、点頭てんかん(ウエスト症候群)の治療に最も有効なのはACTHであり、点頭てんかん(ウエスト症候群)発症後出来るだけ早く使用すべきで、原因の明らかでない点頭てんかん(ウエスト症候群)については、1ヶ月以内が望ましいと記載されています。
また、副作用を軽減するために、可能な限り少量、短期間の投与が推奨されるとなっています。投与量や投与期間については施設間で異なりますが、2週間連続で使用する方法や、1日おきに使用する方法などが一般的で、その後回数を減らしたり、中止したりします。2週間で効果がない場合は、増量や延長などができます。
副作用について
ACTH治療の副作用は以下に示すものが生じる可能性があります。
《ほぼ必発》
易感染性、浮腫・体重増加・満月様顔貌、不眠・イライラ・活気低下
《時に》
色素沈着・ざ瘡、低カリウム血症、高血糖、血圧上昇、可逆性の脳退縮、肝障害、眼症状
《稀だが重篤》
ショック様症状、重篤な感染症、硬膜下水腫・血腫、心肥大・不整脈
これらの副作用をモニターするために、治療中は複数回の検査を行い、予防薬(抗生剤、胃薬など)などを使用することがあります。稀だが重篤な副作用は、特に集中治療や手術治療が必要になることもあり、稀ですが命にかかわることがあります。
ACTH治療に関連するQ&A
ウエストの再発時にACTH治療は再度行うことは一般的?
一般的に初回のACTHが効果があったということであれば再トライを検討する価値はあります。初回のACTHが無効であった方は2回目のACTHは効きにくいことが多い...