外科手術によりてんかん発作が緩和、あるいは消失する場合があります。てんかん発作が頻発した患者さんが、外科手術により発作が消失し、日常生活の質が驚くほど改善することがあります。 このページではてんかん外科についての概要を解説していますので、ぜひ参考になさってください。 また、3つの手術の詳細については別ページ「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」で解説しています。
目次:
1.いつてんかん外科を考えたらよいか
2.てんかんの外科手術を受ける基準
3.てんかん外科手術の種類
4.脳外科手術に必要な検査
5.発達への影響について
6.合併症について
7.てんかんの手術が出来る病院の条件
8.てんかん外科手術に関するQ&A
いつてんかん外科を考えたらよいか
■一般的な難治てんかんの場合
2−3種類の適切な抗てんかん発作薬を使用しても発作が1年以上抑制されない難治性てんかんの場合、てんかん外科を考える一つのタイミングとされています。
下の図にあるように通常3剤目までで発作がコントロールできる方は60-70%程度、それ以外の方は抗てんかん発作薬では発作コントロールが難しいと言われています。

てんかんの発作の頻度が多く、てんかん罹病期間が長いと、精神運動発達、学習面・情動面、そして日常・社会生活に大きな影響を与えます。
てんかんの中には、脳波の乱れ自体が発達に及ぼすてんかん性脳症と呼ばれるてんかんの一群があります(点頭てんかん(ウエスト症候群)など)。この場合、発達過程にある「こどもの脳」を守るために、より早い段階でてんかん外科を検討する必要があります。
てんかんの外科手術を受ける基準
てんかん外科を考える際には下記について十分に理解した上で検討することが大切です。
- てんかんの診断(発作、症候群分類)について
- 必要な検査の種類とその結果の解釈
- 考えているてんかん外科の種類
- 手術により改善が期待できる点、難しい点
- 生じるかもしれない後遺症
1)てんかんの診断(発作、症候群分類)について
今一度、てんかん発作の種類、てんかん焦点の場所、てんかん症候群、原因について理解を整理する必要があります。

上記は整理をする上での項目例です。
てんかん外科手術の種類
てんかんの外科手術は「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」の3つあります。

それぞれの詳細は以下のページをご覧ください
症例に応じててんかん外科を選択する必要があります。
■焦点切除が検討できる例(必要に応じて電極留置を検討)
![●器質病変がある焦点性てんかん[限局性皮脂異形成(皮質形成異常、脳腫瘍、海馬硬化症など)]●器質病変は明瞭ではないが、各種検査結果や症状から焦点性てんかんが疑われる場合の図](http://wepili.jp/tenkan-advanced/wp-content/uploads/sites/4/2025/03/geka04.gif)
■半球離断などの離断を検討する例

■脳梁離断を検討する例

外科手術に必要な検査
治療方針を決めるために、以下の精密検査を行う場合があります。検査によっては入院が必要です。以下のような検査を行うことがあります。
■ 長時間ビデオ脳波
ビデオ撮影しながら脳波記録を行う検査です。発作の頻度によっては、抗てんかん薬を減薬し、半日から数日間行います。

■ 頭部MRI・CT
脳の構造を見る検査で、てんかんの原因とてんかん焦点の検索を行います。通常の撮影法に加えて、てんかん外科を目的とした特殊な撮影法を必要とします。

発達への影響について
てんかん外科治療後に、運動・食事・言葉などの面で、できていたことができなくなる場合があります。小児言語科、リハビリテーション科では、術後早期から患者さんの状態を評価し、訓練を開始しています。
状態を詳しくチェックし、「ちょうどギリギリできること」を多く繰り返すことによって、もう少し難しいことができるようになります。これを繰り返すことで、回復を促進していきます。(頭部に直接処置を行わない迷走神経刺激療法はのぞく)
合併症について
てんかん外科(手術)をすることによる合併症の可能性は、神経学的後遺症、術後出血、感染、髄液循環障害など、一般的に3〜5%程度と言われています。
具体的な症状は「病変・焦点切除術」「脳梁離断術」「迷走神経刺激療法」それぞれの手術のページをご覧ください。
てんかんの手術が出来る病院の条件
2021年11月時点での日本てんかん学会会員の診療科内訳は、小児科医が44%(てんかん専門医における小児科の割合は53%)と最多を占め、ついで脳神経内科18%(以下同様に13%)、脳神経外科18%(20%)、精神科15%(12%)と なっています。
てんかんの診断は、どの科の医師でも可能ですが、手術は脳神経外科医でないとできません。 てんかんの手術では、できるだけ脳の機能を温存しながら、てんかんの元になる部分を切除する必要があります。
脳の機能分布やてんかんの元になる部分の把握など、かなり専門性の高い検査を組み合わせて行う必要があり、これらの検査を行える施設が限られていることも理由の一つです。
てんかん外科手術に関するQ&A
側頭葉の再発で再手術が難しい場合、この先どうなる?
左側頭部の手術をされ、残念ながら切除した付近のところから脳波異常、発作が出ているということですね。まずは根気強く内服調整を継続することになるかと思いますが...