食事療法(ケトン食)

ケトン食とはどういうものですか?

ケトン食療法は糖質制限の食事をおこなうてんかん治療です。欧米などではてんかんの治療法の一つとして確立している方法です。

人間の体は、炭水化物が不足すると、脂肪を燃やしてエネルギーを得ようとし、その過程でケトンができます。飢餓状態でケトンが増加しますが、人為的にその状態を起こすわけです。「FIRST DO NO HARM(邦題:誤診)」という映画で有名になった治療です。

これがてんかん発作に効くメカニズムは、よく分かっていませんが、点頭てんかんを含め幅広いてんかんが治療対象になります。

具体的には、糖糖・炭水化物を減らし脂肪を増やした食事を中心にして、お米、パンなどはできるだけ食べないようにして、卵、豆腐、肉、魚などのたんぱく質が主体の食事にします。効果を高めるためにカロリーや水分を制限する場合もあります。

砂糖についても代わりに人工甘味料を使用したり、食用油を添加するなどの工夫をします。そうすることで、脂肪が分解された際に産生されるケトン体が、脳の神経細胞に作用し効果を発揮するのです。

乳幼児期や経管栄養のある場合は、医師を通じて入手できる特殊ミルク(ケトンフォーミュラ)というものがあります。これはいろいろな料理にも利用できます。

ケトン食療法はどの程度てんかんに効くのでしょうか?

難治性てんかんに対してケトン食療法の効果は、多くの論文や大規模研究で証明されていて、発作が消失する、発作が著減する(>90%以上減少)患者さんの割合は約1/3程度といわれています。

効果のある患者さんでは、約1か月で9割程度効果を示します。しかもケトン食療法後に、ケトン食療法を中止しても約8割で効果が持続するともいわれています。ケトン食療法により抗てんかん薬の減量・中止が可能な場合もあるほどです。

ただ一方で、ケトン食療法は、一部の疾患(先天代謝異常症の一部など)を持つ患者さんでは、病態の悪化の恐れがあるから実施できないこともあります。

ケトン食がてんかんに効くのはなぜですか?

実はケトン食療法がなぜてんかんに対して効果があるのかは、はっきりしたことはわかってないません。ただ、一部メカニズムが推測されているものもあるから参考までにご紹介します。

推測されているメカニズムとしては、

  • 炭水化物の制限
  • mTOR活性阻害
  • グルタミン興奮性シナプス伝達の抑制
  • 電子伝達系を介するKATPチャネル活性化
  • 乳酸脱水素酵素(LDH)を阻害し抗発作作用
  • 脳内のIL-1βの発現を抑制するなどの抗炎症作用
  • MCTケトン食に含まれるDecanoic acidのAMPA受容体阻害

などです。

これらはそれぞれ、以下のような基礎疾患をもつてんかんに有効であることを裏付けるものと推測されています。

Glut異常症:→1
結節性硬化症:→2
Dravet症候群:→5
脳炎に関するてんかん:→6
Perampanelが有効なてんかん:→7

など

ケトン食療法をする際に注意点はありますか?

ケトン食糧法はバランスの偏った食事なので、独自に行ってしまうと予期せぬ合併症が出たり、十分に治療にならない場合があります。また、合併症の可能性もあるので、必ず医師と栄養士の専門的な管理下での治療が必要です。

ケトン食療法には合併症はありますか?

ケトン食糧法の導入時の合併症としては、嘔吐、下痢がしばしばみられます。あとは、糖分の少ない食事であるため、低血糖が起こりえます。ですので、開始後少なくとも2週間は血糖測定が必要です。

さらに長期的には、便秘、成長障害、高脂血症、骨密度低下、腎結石に加えて、微量元素欠乏による心不全なども稀に報告されています。

そのため、ビタミン製剤、カルニチン、微量元素を多く含んだ補助食品を併用する場合があります。

あとは、直接の合併症ではないですが、家族や友人たちと同じ食事ができないことによる、精神的な影響が否定できないことも危惧されます。

ケトン食はどんなタイプのてんかんに有効ですか?

ケトン食療法は、ウエスト症候群(点頭てんかん)でよく研究されてきましたが、それ以外の様々なてんかんに効果が見込めます。さらに、原因によっては是非とも試みるべき病態もあります。逆に、ケトン食糧法を避けるべき病態もあります。治療を開始するに際しては、必ず専門医や栄養士の指導の下で始めてください。決して独自のケトン食治療はしないでください。

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