迷走神経刺激療法は、てんかん発作を緩和する作用のある迷走神経に電気的な刺激を与える装置を埋め込む手術です。

目次:
1.どんな場合に迷走神経刺激療法をおこなうのか
2.迷走神経刺激療法で改善されること
4.迷走神経刺激療法の流れ
5.病変・焦点切除術を受ける際の注意点
6.合併症について
7.外科手術に関するQ&A
どんな場合に迷走神経刺激療法をおこなうのか
迷走神経刺激療法は、てんかん焦点が絞れず、病変・焦点切除術や脳梁離断術が困難なときに施行します。
生活の質、情動面の改善を考えて施行します。
迷走神経刺激療法で改善されること
迷走神経刺激療法では、
- 発作の程度を軽く、短くする
- 感情面が安定、覚醒度が上がり、学業に集中しやすくなる
などの効果があるとされています。
発作が50%未満に減少した患者さんの割合(計440人)は以下のように報告されており、効果が発現するまで2ないし3年を要することもあります。(Morris GL, Mueller WM. Neurology, 1999より)

また、学習面や生活面の改善がみられた患者さんの割合は以下のとおりです。(VNS Therapy Patient Outcome Registry. Data on file. Cyberonics, Inc. Houston, TXより)

迷走神経刺激療法の流れ
■入院期間
手術前日もしくは2日前に入院し、経過が良ければ手術後7〜10日で退院できます。
■手術時間
1〜2時間が目安です。加えて、全身麻酔導入や覚醒、術後検査などがありますのでお待ちいただく時間はさらにかかります。
迷走神経刺激療法を受ける際の注意点
手術を受ける際は、以下のような特徴を十分理解した上で受けることが大切です。
緩和的治療の一つであり、通常根治(発作消失)は見込めない
- 頭部MRI検査は一定の条件で可能
- 治療効果をみるには半年〜2年程度が必要
- パルスジェネレーターの電池交換のための手術の定期受診が必要
- 合併症への理解
合併症について
迷走神経刺激療法では焦点・病変切除術、脳梁離断術のように開頭することはありません。術後、咳、嗄声(しゃがれ声)、嚥下障害(のみ込みにくさ)、出血、感染などが挙げられます。
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