小児期発症のてんかんのうち60-70%は抗てんかん薬内服で発作はコントールできますが、一部は大人になっても発作が持続し、約20%で生涯持続するとされます。また、特発性全般てんかんや成人期発症の焦点てんかんの方では、忙しい日常生活の中で自身の病気に対する理解を深めながら、現在の生活、就学・就労状況に即した対応が重要となります。周囲にどのように伝えるか、進学・就労、運転免許、妊娠・出産などに関してライフステージにあわせて検討することが重要となります。
職場にてんかんがあることを伝えたほうがいいですか?
- 法的に告知義務はないとされています。しかし、定期的な通院、発作時の周りの対応、配慮すべき業務などの点から少なくとも上司など責任ある立場の人には伝えることが望ましいと思われます。
- 必要に応じて医師の診断書を提出し、理解ある友人・同僚・先輩などに発作時の協力を依頼しておくなどもよいかと思います。
- 事前に伝えることで勤務時間や日数などを相談することが可能となります。また自動車運転、火を使った作業、危険な場所での業務など発作状況によって避けるべき業務について相談することが可能となります。
- 職場や社会において、より多くの人がてんかんについて正確な知識を共有し、かつ当事者が安心でき最大限の能力を発揮できる職場環境を協議することが大切です。
自動車運転はできますか?
- 発作コントロールが良好で、定められた一定の条件を満たせば自動車運転は十分可能です。
- 各自治体の運転免許センター・試験場窓口に連絡し必要書類を取り寄せ、現在の発作の状態がどれに該当するのか、主治医と一緒に確認するようにしましょう。
- 飲み忘れなく内服を規則正しく行うこと、自身の発作を正確に把握することが書類記載の前提として大切であることをご理解ください。
自動車運転免許交付・更新許可の条件
(改正道路交通法令第33条の2の3第2項第1号関係)
(1) 以下のいずれかの場合には拒否等は行わない。
- 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
- 発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、X年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
- 医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
- 医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
医師が、「6月以内に上記(1)に該当すると診断できることが見込まれる」旨の診断を行った場合には、6月の保留又は停止とする。
- 免許取得や更新時の質問票に虚偽回答をしたり、病気の影響で正常な運転ができなくなる恐れを知りながら事故を起こすと、罰則が科せられることがあります。
- 大型免許や第二種免許については別途検討が必要ですので主治医に相談ください。
- 夜間の長時間運転や抗てんかん薬を飲み忘れた時などは運転を控えましょう。
- 病気の症状等を理由に免許を取り消しになった場合は、取り消しから3年未満に運転適性の状況が回復すれば、実地・学科試験免除(適正検査のみ)で免許の再取得が通常可能です。
妊娠・出産についてなにか注意点はありますか?
- 事前に内服調整を要する場合があるため、可能な限り計画的な妊娠・出産を心がけましょう。
- 妊娠前から葉酸の内服を心がけましょう。
- 全般性強直間代発作(大発作)による転倒、外傷は避けましょう。
- 妊娠判明後にご自身の判断で突然内服を中断すると大発作を誘発する可能性があります。
- 近年、児への影響(催奇形性、出生後の発達)が少ない抗てんかん薬が増えています。児への影響の出現率は抗てんかん薬の種類や量によるので主治医に相談ください。
- 通常通りの出産が可能であることが多く、授乳も基本的に問題ありません(一部の抗てんかん薬では,傾眠,哺乳力低下などが問題になることがあります)。
- 育児、授乳による疲労、睡眠不足を避け、ご家族の協力を検討しましょう。
- 気分の落ち込み,不安などあれば早めに相談するようにしましょう。