Vol14. 足が不自由だからこそ足を使う車椅子を

本日の専門家ゲストは株式会社TESS代表取締役、鈴木堅之さんです。

東北大学発ベンチャー!! ~ 株式会社TESS ~ 

妙佳 株式会社TESSこの会社名からどのような会社かが想像できなかったんですけれども、株式会社TESSはどのような会社になりますか? 

鈴木 私どもは今から12年前に宮城県の仙台市、東北大学の中で設立をした大学発ベンチャーといわれる会社になります。

妙佳 さらに、具体的にどういうことをしているかお伺いしてよろしいですか?

鈴木 ベンチャー企業というと、大体、皆さんはIT系とか少し今風の会社をイメージされると思うんですけれども、私どもの会社は特に医療や福祉の分野に特化した大学内の先生方の研究を事業化して広く皆さんに使えるような製品とか、サービスにしてお届けするというような会社になります。 

特に今、私ども扱っていますのが車椅子の分類になるんですけれども、「足で漕ぐ車椅子」という、これも皆さんほとんどご覧なられたことのない方が多いんですけれども、世界で初めてペダルが付いた、足が不自由な方が自分の足を使って移動することを可能にするような車椅子を作っている会社です。今のところ製品はそれしかありません。 

足が不自由だからこそ足を使う車椅子を 

妙佳 なぜ、この足漕ぎ車椅子の製造に携わるようになったのか、きっかけをお伺いしてよろしいですか? 

鈴木 私は元々東北大学出身でもありませんし、今この会社がある宮城県出身でもないです。出身は静岡県伊豆出身で、大学が岩手県。初めて就職したのは山形県。山形で小学校の教員をしておりまして、元々は普通に小学校で子どもたちに勉強を教えるという、小学校の教員をずっとしておりました。 

その中でいろいろな学年の子どもたちを受け持ったんですけども、私がちょうど3年生を受け持った時、クラスに車椅子の男の子が転校されてきて、お父さんとお母さんが一生懸命頑張って私のクラスに通えるようにということで、車椅子でいつも送り迎えをしながら勉強を頑張ってたんです。ただ、勉強なんていうのは子どもたちにとってそんなに楽しくない時間です。一番楽しいのは遠足や社会科見学、それから校外学習とかですよね。あと普段の休み時間とかお友達がワーッと遊んで自由にみんなと好きなように楽しむ時間の時に、どうしてもその子は参加できなくて、いつも私の隣にいてニコニコ笑ってくれてるけれども、「実際は楽しくないだろうな」というのを感じていました。  

この子がもっと自由に動けるように、自分の意志で自分の好きなところにお友達と一緒にいろんな関わりができたら、きっと本当の意味で学校が楽しくなるんだろうなというのをずっと思っていたんです。たまたま放課後にテレビのニュースで東北大学の半田康延先生という有名なリハビリの先生ですけれども、この方がペダル付きの車椅子を開発したというニュースを見たんです。  

最初ニュースを見た時に「いやいや、車椅子は足が不自由な方が手を使ったり、電動で…電気の力で動くものなのに。ペダルに付けたって意味がないじゃないか」というふうに思ったんですよね。ニュースをずっと見ていくと本当に動けない、全身の力が入らないおばあちゃんがペダルのついた車椅子にポンと乗ると、さっきまで動かなかった足をスルスルと動かして病院の中をクルクルすごいスピードで走り回ってるんです。「これはすごいんだけれども、たぶん電気の力とか何か補助的な外部の力を使って足を強制的に動かしているんだろうな」というふうに思ったんです。

でも、どうやら話を聞いているとそうではなくて、人間には原始的な「歩行反射」といわれる、ちょうど生後2カ月ぐらいの赤ちゃんまでにしか見られない人間の本能だそうですけども、赤ちゃんの脇を抱えてちょっと姿勢を前かがみにするんです。床にそのまま足をポンとつけると赤ちゃんの足をパタパタ左右交互に、まるで歩くように踏み出すんです。これは一見するとただ赤ちゃん暴れてパタパタやっているように見えるんですけど、これはちゃんと原始的な「歩行反射」、歩くための人間の脳を返さないで足を左右に動かすという本能があるんです。

足漕ぎ車椅子というのは、私も見た時にどうも変な形だな?と思いました。自転車だったらペダルと座面までの距離がある程度長くて、体を開く感じで乗れるんですよね。足漕ぎ車椅子の場合はちょっと窮屈なんですよ。ペダルと座面までの距離がすごく近いんです。こんな窮屈そうで漕ぎにくそうだなと思ったんですが、実はその窮屈そうなサイズ感にその原始的な歩行反射というのを導き出しやすい秘密が隠されているというところも先生とのお話でよく分かって、これはすごいなと思って、私は山形県で小学校の教員をしていて、東北大学は隣の宮城県ですから、学校が終わって、すぐ車を飛ばして大学に行ったんです。 

そしたらすごい話題になっているのかなと思ったんですが全然話題になってなくて、何でだろう?と思ったんですが、「まだまだ研究中なので誰かに使ってもらうとか、販売できるとかいうものではないんだよ」というお話を伺って、私のように「これあれば…!」と思う人がたくさんいらっしゃるで、「早く製品化してください」というお話をずっとしてたんです。 

私はそのまま小学校の教員をして、東北大学では足漕ぎ車椅子の研究がどんどん進んで、ある時、東北大学だけではないですけれども、全国で大学ベンチャー企業を1000社つくろう、いろいろな大学がありますので、ただ大学の発明というのがなかなか世に出ない。未利用特許、使われない特許が山のように眠っている。これはもったいない、そういうベンチャー企業を作って、そこから世の中の皆さんに知ってもらおうという活動がすごく盛んになった時期があるんです。全国ベンチャー企業1000社というのを国で推し進めた頃に東北大学でも、足漕ぎ車椅子の発明をしっかりと世に出そうということでベンチャー企業を作ったんです。その時に声を掛けていただいて、東北大学の方に来たというのが今の会社を作る一番のきっかけになっています。 

足漕ぎ車椅子COGYの課題を解決するために 

妙佳 実は番組の実際にCOGYを体験されたお嬢様のお母様にゲストでお話をしていただいたんですけれども、レンタルについて介護保険は適用があるのでちょっとお値段が安くはなってるんですけど、障がい者保険のほうがまだ適用になってなくて、その制度が進んで安く借りられるようになったら、もっと漕ぎにいけるのにというようなお話を聞かせていただいたんですが、今、現状制度の改革とか、そういった部分は鈴木さんのほうでも何か動いてたりされますか? 

鈴木 お話しいただいたとおり、これ1台大体30万円以上するんです。ちょっとお値段が高いという原因としては、やはり台数がなかなか出ていない。今、日本国内では6,000台ほど出ているんですけれども、車椅子とかこういった一般の製品の中では本当に少ないです。 

ものを量産するというと、大体単位は1万個ぐらいからが量産といわれるので、そこまでのまだ台数はいっていないということです。COGYは職人さんが1台1台手作りで溶接をしたりしているので、機械でロボットがずっと作っていくようなシステムには乗らないんです。手づくり品ということでそこで価格が高いという要因が1個あります。 

これをクリアするためには、いろいろ日本の社会保障制度に乗る必要があります。なかなかこのベンチャー企業とか、私どものような小さな会社が日本の社会保障制度を満たすような、条件をクリアするのは結構大変ですけれども、足漕ぎ車椅子の場合はこの12年間の間に介護保険制度をちゃんと取れるようになりまして、高齢者の方や特定の疾患の方でありましたら、介護保険を使って月に大体1,500~1,600円ぐらいですかね、いろいろ取扱店さんで差はありますけれども、大体それぐらいの価格、千数百円の価格でレンタルができるというのが1つです。 

その他に今、介護保険以外の若い年代の皆さんにお使いいただきたいということで、いろいろ厚生労働省の皆さんにアプローチしてお願いをかけているところです。厚生労働省の皆さんとしても、やっぱり高齢者の制度はいろいろ手厚く保障があって、ものを借りるよという時もいろいろな借り方があるんですけれども、若い年代の方たちになりますと、これが購入の助成金とかで結構選択肢が狭まっているというところは認識されているようで、「何とかしなくてはいけないな」というお話はちょうどこのコロナの前あたりに1度、厚生労働省の副大臣の方からも、「そこはちょっと気にして考えています」というお返事をいただきましたので、まだまだ諦めずにCOGYが若い世代の方たちにも費用の負担が軽く使っていただけるような策を今頑張って作り始めているところです。  

国の制度を待っていると非常に時間と期間がかかりますので、今、困られてる方に使っていただくことが難しいことがありますので、私どものほうで、台数に制限はありますけれども、大体、一番小さなSSサイズ、モモちゃんに乗っていただいたSSサイズ、それからMサイズ、Lサイズと今は3種類サイズをそろえることができます。 

このサイズは一番小さいものですと身長は1mのお子様から乗れますので、大体、幼稚園の年長さんとかぐらいから大丈夫です。1mから大体1m40cmぐらいまでのお子さまが乗れるようにSSサイズはなっていますので、非常に幅広く、小学生の中学年、高学年ぐらいまでは乗れるかもしれません。Mサイズという一般的な今一番出ているサイズが身長140センチぐらいから176cmまで乗れますので、小学生から中学生、大人の方まで乗れるようなものになっています。

最近、さらに大きなスポーツ選手も足漕ぎ車椅子を使っていただいてます。そのために180cm以上、体重100kg以上という方でも乗れるようにLサイズという少し大きめのサイズもご用意してます。 

この3種類を、レンタル…自費のレンタルで乗っていただけるようなサービスが今ちょうど始まったところです。これは私ども独自の制度で、お問い合わせいただけましたら、送料はちょっといろいろなエリアでかかってしまいますけれども、大体1万5,000~1万6,000円ぐらいでできるようには整えているところです。サイズにこだわらず1万5000~6000円で、どのサイズも1月から借りていただけるような仕組みを作っておりますので、お問い合わせいただければなと思っています。 

 しばらくはこのシステムで使っていただいて、国からも若い世代の方たちに手厚くというようなところが整ってきたら、そちらの制度を使ってさらにご負担を軽く使っていただけるような流れになればいいなと思って頑張っているところです。

妙佳 ちなみに何人か一緒に借りて、それを1カ月の回して使うというかは可能ですか? 

鈴木 1万円ちょっと超える価格での設定になってしまっているので、お1人で1台というとちょっと難しいかなという方は今まさにお話しいただいたように、1台を借りて、それを1,000円ずつとか出し合って、今流行りのサブスクみたいな形で出しあっていただいた方は空いている時はお好きなように使えるとか、そういう使い方もしていただけてもいいのかなというふうに思ってます。 

妙佳 皆さん、早速、問い合わせしてみたいとか、動画を見たいという方は、これを聞きながらたくさんいらっしゃると思うんですけれども、まずはホームページにいけば全てそれは解決すると思っておけばよろしいでしょうか? 

鈴木 そうですね。ホームページをまず見ていただく。ホームページでちょっと分からないな、もうちょっと知りたいなという方は、メールでもお電話でも構いませんので、問い合わせいただければお答えさせていただきます。

妙佳 ありがとうございます。ホームページはどのように検索するかといいますと、アルファベッドで「COGY」と入れて検索していただければホームページが見られるようになっておりますので、ぜひ見ていただきたいと思います。 そして、先ほど鈴木さんの方もおっしゃっていただきましたように、お問い合わせ先から試乗をしてみたいなとか、質問等も全て受け付けてくださるということですので、遠慮なく皆さんお問い合わせいただけたらと思います。

 本日の専門家鈴木は株式会社TESS、代表取締役の鈴木さんでした、ありがとうございました。

今回のnanacaraラジオの内容をYoutubeでも聴けます!

この記事を書いた人