今回の専門家ゲストは2回目の登場となる、株式会社ノーサイドの中西社長です。本日は「障がいがある人もない人もみんなで支え合う社会を作る」ことを掲げて取り組んでいらっしゃる社長の想いを聞いていきます。
つながれてない人とお話しがしたい
妙佳 前回、中西さんにお話を聞いて、またぜひ熱い想いをお聞きしたいなと思って、今日もゲストで来ていただいたんですけれども、今日も1日どうぞよろしくお願いします。
中西 僕でよければいくらでも!よろしくお願いします。
妙佳 中西さんはずっと10年以上この福祉に携わってきて、お母さん、お父さんにこういうことを伝えていきたいなということは何かございますか?
中西 すごくあるんですけれど、僕は17年、この福祉の仕事をさせてもらっているじゃないですか。17年前は医療的ケア…例えば疾患、病気、難病とかは本当にびっくりするほど少なかったんです。医療的ケアの子も少なかったし、難病の子は病名が分かっていなかったり、皆さん今はあまり聞かなくなったと思うですが、例えば小児麻痺とか脳性まひとかそういう名前でくくられていたんです。 でも今は医学がすごくグッと進歩して、疾患名ができて難病指定が出たりとか、例えば医療的ケアすることでも手術の技術がすごく上がっているので、もうすごいですよ。だから17年前はそんなことはなかったんですけれども、今はやっぱり17年前よりも医療とか制度がしっかり進んできた分、悩むこと多いと思うんですよね。
特に「発達障がい」というものが障がいになったのが本当に最近ですから、そういう意味でいったら、制度ができています、福祉サービスもあります、いろいろな使える支援がたくさんあるからこそ分からなかったり、悩んでしまったりしてしまうし、それがあるのにもかかわらずつながらなくて悩んでいる人がたくさんいる。
だからつながる人はどんどんつながって生活が改善していって、お母さんが外に出られたり、子どもがいろいろな人の輪の中に入っていったりとかできるんですけれども、つながれない方は本当に…、特に子どもが外に出ることも少ないし、お母さんが悩みを相談するところもなくなってくるし、だんだん年月が過ぎてくるとその差がすごく出てきてしまって。どちらかといえば、僕らのお仕事は「使える人たち」とお話することが多いでしょう。支援を使っていたりとか、ここに相談に来た方とお話しすることが多いじゃないですか。
でも僕は本当にお話ししたいのは「つながらない方」と話したいんですよ。つながった人はもういいんです、つながったから。つながった人たちと僕たちは横に伴走で、これから先も山あり谷ありですけれども、ずっとこれから一緒に生きていくじゃないですか。僕はつながっていない人のためにノーサイドをやっているんですよ。だからつながっていない人たちとお話しできるのはものすごく大きいことだと思います。
“つながれない人”とつながるために
妙佳 このつながれていない方たちとどういった方法でつながっていこうとか決まっていたりするんですか?
中西 いろいろなボランティアといったらいいことをやるイメージがあるかもしれないですけど、やはり僕はイベントですよね。例えばてんかんの啓発イベントであるとか、難病を知る勉強会とか、いわゆる病院の先生とかお母さんたちがみんなで協力して啓発するイベント。あとは病院が主催している遊びのイベントとか、そういうところに僕はいつも行くんです。そういうところで悩んでいるお母さんたちをお見かけしたりとか、お話しする機会があったら別に、こうしなさいああしなさいなんて絶対言わないので、「何か困ってることがありますか?」と言ったら「いや、実は…私、ちょっともう疲れているんですけど、預けるところないんですよ」とか言ったら「どこに住んでいるんですか?」とか言ってお話しするようにしてます。
大事にしている「伝えること」
中西 ずっと一貫してお母さんたちとお話しする中で大事だと思っていることが、例えばスタートは病院ですから、病院から一緒にお母さんと地域に戻りました。その時はお母さんとお父さんと子ども…家族と子どもの家の中だけの生活がまずスタートすると思うんです。最初、お母さんはお父さんが仕事に行っている間は「どうしよう、どうしよう…」と思いながら、でも病院で教えてもらったことを一生懸命お母さんがお母さんをお休みして看護師さんになり代わって「これしなあかん、あれしなあかん」と言いながら時間が進んでいくとは思うんですよ。それはすごく大事なことだと思うんです。
それはすごく大事なことですけれども、それだけをしていたらその子にとってのお母さんの時間、「お母さんにとってのお母さんの時間」というのがどうしても減ってしまって、医療職としてのスーパーお母さんとして子どもと関わることばかりになってしまうじゃないですか。そうなってくると次はどうなるかといったら、お母さん以外に任されなくなる。○○ちゃんの専門の“お母さん”という枠を超えたスペシャリストになるわけだから、それはどこかでいろんな人に入ってきてもらわないといけません。お母さんがその子を違うところ…例えば幼稚園や療育センター、保育園、小学校、ママ友の集まりとか、そういうところでみんなのコミュニティーの中に入っていく時にその子を入れることがすごく難しくなると思うんです。
いろいろな人にお願いすることで、その子も成長していくためになるし、お母さんもお母さんとして子どもを見ることができるし、お母さんはお母さんの時間を持つことで、またより一層子どもを違う目で愛することができることになるので、そこをやってほしいなと思うんですよ。思うんですけど…言うのはめちゃくちゃ簡単ですけれども、お母さんからしてみたらその子どもが全てですよね。例えば病気がある、障がいがある子どもさんがいる。その親はちょっとでも、大きくても「何で私は元気に生んであげられへんかったんかな」とか「何で私はちゃんと育てられんのやろう」とか、何で私、私…とずっとどこかで責め続けている部分があって、僕が今まで17年間やっていてそういうお母さんにしかお会いしたことないんですよ。
妙佳 そうなんですね…。
中西 その気持ちをなくすなんてことは絶対できないし、そこに僕が踏み込むことは絶対にないです。それはもう僕には計りしれない分からないところですから、そこは踏み込まないんですけども、その気持ち自体がお母さんが子どもを離せない理由だったら「お母さん、違うんちゃう?お母さんと子どもが外とつながるために、お母さんがそこはちょっと我慢して、心を鬼じゃないけど、自分がどうしようと不安になっても施設を覗きに行ったりとか、もう大丈夫かなと思いながら見えなくなるまで手を振ったりとかしながらでも子どもを違う人にやっぱり支援してもらうというのをやっぱりしていかないとあかんちゃうかな。そのきっかけはどこで来るか分かりませんけれども、こうやって僕とお話しした時がきっかけかもしれないから、ちょっとそういうところを探してみたらどうかな?」と言うんですよ。
僕はその子の親ではないから分からないし、実際に子どもはいないから分からないですけど、でも「もしかしたら子どもにとってお母さんのその気持ちが社会とつながれない一つの要因になっているのかもしれないし、その気持ちがお母さんを縛りつけていて、もっといろいろなことができるお母さんなのにそうならない一つの要因なのかもしれないよ。」ということを言います、誰も言ってくれないですからね。
妙佳 そうですよね。
中西 実際にそうしていかないと、子どもは親が育てるものではなくて社会でみんなで育てていくのが本当なはずです。でも障がいや病気があることでそれができないのはあまりにも寂しいじゃないですか。こんな話したら必ずついて回るのが「いや、そうは言っても、私の子どもは行くところがないんです。うちの子どもを支援してくれる人がいないんです。もうそんな制度があっても、うちの地域はないんです」と言われるんですけど、ないからその気持ちを持たなくていいかといったらそうじゃないと思うんですよ。
ないから覚悟してお母さんがやらないといけないというところがあるんですけど、「いつでも外に出られる準備する」というのと、「ないから私がやらないとしょうがないでしょう」というのとはまたちょっと違うと思うんです。そこの部分を当然クリアできるように、それはノーサイドも手伝えることは手伝うし、探して見つかるんでしたらその地域で探して見つけていくし、作れるんだったら作っていくし…というので、何とかして子どもを社会に出していってあげる。お母さんはお母さんの時間を少しでも取ってもらうというのをすることですごく良くなると思います。
お母ちゃん最強説
中西 今日はもう一つあって、「お母ちゃん最強説」というのをもっていて、お母さんが笑ってる家はうまいこといってるんですよ。子どもが笑っている家がうまいこといっているのかどうかは分からないです。でもお母さんが笑っている家はうまいこといってますよ。お母さんがやっぱりお母さんらしくやれるようになる家はやっぱり最強だなと思っていて、でもそれを聞いた人に「それがやりたいけどできへんねん。あんた好き勝手言って…」と言われるかもしれないですね。「私だって、そういうふうにしたいわ。いろんなことあんなこともこんなこともやりたいけどできへんねんやん!」というのを分かった上で、だからちょっとでも変えられるようにお手伝いしたいなと思っているんです。
妙佳 そういうことですね。
中西 お母さんに頑張れなんて全然思ってない。この話を聞くと、今、笑えてないお母さんとかしんどい思いをしてるお母さんは「やっぱり私が悪いねんや」とまた思ってしまうかもしれないので、全然そうじゃないです。「頑張りなさい」なんて一言も言わないし、一欠片も思ってないですよ。かと言えば、肩にたくさん背負っているものを下ろしてほしいと思うので、それをやることで何か変わるかもしれないし、下ろしたことで駄目なことになるんだったらまた乗せれるから。
妙佳 乗せるのは逆にね。
中西 そうそう、下ろすほうが難しいから、そうしてみて1回ちょっと肩の力抜いてコーヒーでも飲める時間があったらいいなって、その時間の子どもは違う人たち…そうやって専門家の子たちと一緒に遊んでると思ったらお母さんも別に負い目感じないでいいやん!コーヒーを飲んでたらええねん!頑張ってきた子どもが帰ってくるでしょう、1時間か2時間後に。「何だよ頑張ったなー!」とやってまた親子の関係にも戻って、そういうふうになれるようにしていきたいんですよ。
妙佳 そのためには、やはりもう施設もどんどん増えていってほしいし、人材も増えていってほしいし、コミュニティーも増えてほしいですよね。本当に気持ちよく過ごせるコミュニティーがもっともっと増えていったら最高ですよね。
中西 福祉だけじゃないですからね。お母さん同士のつながりがあるだけでも全然違います。もし聞いている方で、本当に1人で悩んでいる方とか、ひとりぼっちな人、孤独を感じている人は本当に連絡いただければ。
妙佳 連絡は「東大阪ノーサイド」というふうに検索していただいたらホームページがバンと出てきますので、そこのお問い合わせ先から「中西さん聞きましたよ」とか、文句でもいいですと言ってますからね。
中西 本当に何でも出していただけたら。
妙佳 リアクションもぜひくださいということで。
中西 そうです。「好き勝手言いやがって」とよく言われるんですよ。それを言われるということはつながったということだから、そのために一生懸命やって、それが先ほども言いましたけど、ノーサイドというのはつながってない人とつながるためノーサイドですから、そこを一生懸命やってるので、何とか言った以上はお手伝いもしたいし、寄り添いたいところがあるので、そういう話をいつもご家族に…。
妙佳 されているわけですね。
中西 特にお母さまに、お父さまはいつもにこにこして、よう分からんわみたいな感じ(笑) でもお父さんはお父さんで悩みありますからね。また3回目があるんだったらお父さんに向けて、お父さんたちはお父さんたちでものすごい手伝いたいと思っているんですよ、お母さん。お母さん!お父さんも本当は手伝いと思っているんですよ!はい、言っておきましたので。
妙佳 ありがとうございます、代弁していただきました。絶対にまたお話は聞きたいと思いますし、いろいろまた施設こととかで進捗情報とかあればぜひ教えていただきたいと思いますので、引き続きの間よろしくお願いします。
中西 どうもありがとうございました。
妙佳 本日の専門家ゲストは第2回目の登場でした株式会社ノーサイドの中西さんでした、ありがとうございました。
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