学校生活における注意点はありますか?
発作を恐れて、学校生活における活動を一律に禁止することは、子どもが差別感を感じたり、心理的な負担を抱えるだけでなく、子どもの成長・発達に必要な運動能力や社会生活能力が形成されにくくなる、自我や自信が育ちにくくなるなどのデメリットがあります。
発作の起こりやすいタイミングや誘因など、気を付けるポイントについて医師に確認し、学校と共有しておくことが大切です。
学校生活において、気を付けるポイントの例を以下に提示します。
■体育
- プール(※)
- 激しくぶつかり合うもの(ラグビー、柔道など)
- スピードの速いもの(スキー、スケート、自転車競技など)
- 高いところで行うもの(鉄棒、登り棒、登山など)
※プール授業で気を付けるポイント
- 見守り(監視)、救助体制を徹底する
- 炎天下では疲労がたまり易いので気をつける
- 休憩をとりながら泳ぐ
- 飛び込んだり、深く潜らない
■体育以外の授業
- 火や刃物などの危険物を扱うことのある授業(理科の実験、技術・家庭科の実習、図画工作や美術の授業など)
学校生活において宿泊・校外学習で気をつけること
- 規則的な生活を送り、指示どおり服薬を続ける
- 無理のないスケジュールで睡眠時間を十分にとる
- 不安や緊張を著しく高める遊びは避ける
- 薬は多めに持っていく
- 飲んでいる薬の内容、家や病院の連絡先を書いたメモを身につけておく
- スケジュール(発作が起きた時に注意すべき活動はないか)や薬の内服タイミングなど、事前に学校側とよく相談しておく
- 必要に応じて、学校面談を行ったり、緊急受診時の紹介状を持って行っていただくケースもある
学校にはどのように伝えればいいですか?
園や学校にいる間、先生がお子さんの一番のサポーターです。発作症状・発作後の状態・発作の誘因・使用しているお薬について詳しく伝えるようにしましょう。
園や学校へ、こどもにてんかんがあることを説明するときのポイント
幼稚園・保育園・学校などに、こどもにてんかんがあることを説明するときは、「てんかん」であることの診断書だけでは、現状が正しく伝わらないことも少なくありません。以下の点に注意しながら、担任の先生や学校の責任ある立場の先生と、直接話し合う機会があればよいと思います。
- てんかん発作の症状、頻度、起こりやすいタイミングなど具体的伝える
- 発作時の対応について共有(緊急処置薬のタイミング、救急搬送のタイミングと搬送先など)
- 前述の学校生活で気を付けるポイント(プール授業など)やその対応について、事前に主治医と相談しておく
- 過度な制限や不当な対応を受けないように、粘り強く話し合う。
以下も参考になさってください
■学校における発作時の対応について
学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入については、平成28年2月29日付けで文部科学省による規定があります。学校現場等で児童生徒がてんかんによるひきつけを起こし、生命が危険な状態等である場合に、現場に居合わせた教職員が、坐薬を自ら挿入できない本人に代わって挿入する行為については、以下の4つの条件を満たす場合は、医師法第17条(医行為)の違反とはならないとされています。
- 事前に医師から書面で指示
- 学校・教育・保育施設等に対して具体的に依頼
- 本人確認し、手袋を装着し坐薬挿入
- 坐薬を使用した後、必ず医療機関を受診
また教育・保育施設等(保育園、幼保連携型認定こども園、放課後児童健全育成事業、放課後子供教室等)におけるてんかん発作時の坐薬挿入についても、現場に居合わせた教育・保育施設等の職員又はスタッフが行う場合は同様とされています。一連の行為については、プライバシーの保護に十分に配慮するよう明記されています。
■書面による医師からの指示書の作成方法
「学校や園での緊急処置について」の項目で、学校および教育・保育施設等におけるてんかん発作時の坐薬挿入について記載いたしました。各自治体によって、フォーマットは異なります(例えば、大阪府のものは こちらで確認できます)。
記載は医師が行う必要があります。受診の際に、医師に記載してもらうように依頼します。発作時に現場での複雑な判断が必要にならないように、できるだけシンプルなものが望まれるので、主治医と相談しておきましょう。現時点では、発作時に使用される薬剤としては、ジアゼパム坐薬(※)が多く、その他、エスクレ坐薬なども使用されています。欧米では、即効性のあるジアゼパムゲル製剤やミダゾラム頬粘膜製剤などが使用されています。
(参考)ジアゼパム坐薬(ダイアップ坐薬🄬)について
けいれん重積治療ガイドラインには、ジアゼパム坐薬に関して、以下の記載があります。
「日本での効果・効能は「熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善」である。発作予防に対する有効血中濃度(>150-350ng/ml)に達するのは投与後30分以内であり、8時間間隔で2回挿肛することで予防治療域濃度を24時間保てる。急性けいれん発作発症後に治療として使用した報告は少なく、目前のけいれんを収束させる適切な使用量(けいれん発作収束が期待される血中濃度は、発作予防に対する濃度より高いことが推定される)、有効性のエビデンスはない。挿肛後ピーク濃度に達するまでの時間が遅いため、救急治療目的には適さない。」
つまり、ジアゼパム坐薬は、効果が出るまで少なくとも15-30分以上かかると推定されるため、目の前で生じている発作を速やかに消失できる効果は期待できないと考えられています。しかし、病院搬入まで時間を要するような場合などで、発作の群発を防ぐ、搬送中に発作を収束させる、病院搬送後の治療に繋げる、などの可能性があります。総務省の公表では、救急要請から病院搬入までの平均所要時間は約40分とされていますので、現状ではジアゼパム坐薬の効果と限界を踏まえて使用する必要があります。
参考資料
小児けいれん重積治療ガイドライン2017 小児神経学会 ダイアップ坐剤添付文書
総務省ホームページ
大阪府教育庁ホームページ
発作(ダイアップ使用)があった次の日、いつも通りの様子に戻っていても学校やデイはお休みした方がいいですか?
疲労が発作の誘因になる方はおられますが、疲労をさけるべく、遠足やプールなど様々な行事への参加を制限することは、お子さんの発達の観点からは望ましくない対応と考えられています(詳しくは、「てんかんと発達」をご覧ください)。
発作の翌日、普段通りの生活を行ってよいかどうかは、お子さんの発作の頻度や発作のパターンによって異なりますが、基本的には登校を控えるなどの行動制限は不要なことが多いです。主治医の先生や、お子さんを預かって下さる学校・デイの先生ともよく話し合ってみてくださいね。