日常生活で気を付けることはありますか?
日常生活においては
①万一の発作に備えること
②発作を予防すること
が重要です。
1. 万一の発作に備える
しばらく発作がない方でも、急に発作が起こることがあります。それぞれの発作症状に合わせて「もしここで発作が起きたらどうなるか」ということを考えて行動することで、発作時にケガをしたり命に関わる事態になることを防ぐことができます。
例1:お風呂での注意
一人で入らない、鍵をかけない、時々外から声をかける、シャワーだけにする、入浴する場合はお湯の量を少なくする、転倒に備えてマットをひく、など
例2:避けたほうよいスポーツ
激しくぶつかり合うもの、スピードの速いもの、水中・高所で行うもの、など
例3:電車・信号待ちのとき
駅のホームの最前列、歩道の端に立たない、など
2. 発作を予防する
疲労・睡眠不足・ストレスがたまることで、発作が起こりやすい状態となります。規則正しい生活をし、上手にストレス発散をしましょう。また、しばらく発作がない場合にも、薬は忘れず毎日飲みましょう。
雨の日など天気が悪い時に発作の回数が増える気がします。発作と天気との関連はありますか?
天気とてんかん発作の関係についてですね。外来では、「雨の日に多い」、「台風が来る前に発作がでる」、「春になると出やすい」、、、など、どうも天気や天候と発作が関係あるのでは?との声が多く聞かれます。
天気との関係として、頭痛やぜんそくなどの疾患との関係はよく耳にしますが、天気とてんかんとの関係は、教科書などにもあまり載っていません。しかし、最近の研究論文からは、「高気圧よりも低気圧の方が発作が生じる可能性が高い」「1年のうち、寒い日よりも暖かい日の方が発作が生じる割合が高い」などが報告されています(BMC Neurol 2022)。
将来は、天気以外の発作の誘因がわかってくれば、事前に発作の生じやすさがわかり、生活の工夫ができる日が来るかもしれませんね(例えば、雨の日、蒸し暑く、睡眠時間が短い時は発作が起こりやすいため、外出を控え自宅で安静にしておく)。
予防接種は受けても大丈夫ですか?
コントロール良好な場合2~3か月発作がなければ接種可能です。それ以外でも、主治医と相談して積極的に接種しましょう。
旅行に行くときの注意点などありますか?
旅行をすることは、てんかんのあるお子さんにとっても、リラックスができたり、いろいろな経験が得られるチャンスでもあるとおもいます。旅前の準備や旅行先での注意事項については、以下を参考にしてください。
■旅前の準備
- 旅先での救急病院を確認
- 病状を記したメモなど(内服薬:お薬手帳、通院中の病院の連絡先、病名など)身につけておく
- 人のいない離島や連絡のつかない山奥は避ける
- 1人だけの旅行は避ける ※信頼できる人の同行が望ましい
■旅先での注意事項
- 服薬遵守(つい忘れがち、意識して)
- 薬は予定より多めに持参しておく(違う場所に複数個持参しておく)
- 睡眠不足をさける
- 無理のないスケジュールで
食事療法がてんかんにいいと聞きました。どんな食事を食べれば良いですか?
てんかんの食事療法の一つに「ケトン食療法」という方法があります。
てんかんの治療のひとつで、糖質制限の食事療法を行います。厳密な管理が必要なので、病院の栄養士さんとの相談が必要な治療となります。
ケトン食療法は、欧米などではてんかんの治療法の一つとして確立している方法です。糖・炭水化物を減らし脂肪を増やした食事を中心にして、お米、パンなどはできるだけ食べないようにして、卵、豆腐、肉、魚などのタンパク質が主体の食事にします。
砂糖についても代わりに人工甘味料を使用したり、食用油を添加するなどの工夫をします。
そうすることで、脂肪が分解された際に生産されるケトン体が、脳の神経細胞に作用し、効果を発揮するのです。
他にも、タンパク質を制限しないで糖・炭水化物を抑えて脂肪を多めに摂取する「修正アトキンス食」も有効性が報告されています。
いずれにしても、バランスの偏った食事なので、独自に行なってしまうと予期せぬ合併症が出たり、十分に治療にならない場合があるので、必ず医師と栄養士の専門的な管理下での治療が必要です。
他にも、医師を通じて入手できる「特殊ミルク(ケトンフォーミュラ)」は、乳幼児期や経管栄養のある場合には直接使用できますし、いろいろな料理にも利用できます。また、効果を高めるためにカロリやー水分を制限する場合もあります。
夏に向けて外遊びをどのくらいしていいか、暑さ対策はどういうことをしたらいいですか
暑さ対策はとても重要な視点ですね。ドラべ症候群など、熱がこもると発作が増加または止まりにくくなるタイプのてんかん発作があったり、それが疑われたりするお子さんにとっては、特に暑さ対策が必須となります。
すでに使用されているかもしれませんが、今年も新しいクールグッズがたくさん発売されています。
ご家族のアイデアを生かした取り組みもありますので、また機会があれば紹介しますね。
場合によってはある一定暑い時期の活動を制限する必要があるお子さんもいますので主治医と相談ください。
一方で、すべてのてんかんがあるお子さんが暑い時期の活動を制限する必要があるわけではありません。 時に過剰な制限は、お子さんの可能性を狭めてしまうこともあります。 お子さんのてんかんのタイプや基礎疾患が、暑い時期の活動を制限する必要があるかどうか、あればどんな時なのか、主治医とよく相談くださいね。