てんかん発作症状の記録の重要性

てんかんの発作症状はさまざま。
治療方法にもたくさん種類があります。

専門医はどのように治療を選択・提案しているのでしょうか?

どのような症状だったのかをできるだけ正確にヒアリング
どのような種類のてんかん発作だったかを推定
どのような種類のてんかんだったかを推定
どの部分がてんかん焦点(脳の中の発作の箇所)かを推定
治療方針・抗てんかん薬の種類が決まる
てんかん手術に際しての重要な情報

ヒアリングから診断までの例

例えば、7歳のこどもが母と一緒に寝ていた際に、寝入りばなに“右顔面がぴくぴくするような発作”が目撃されたとしましょう。

右の顔面という症状が体の一部なので、脳の一部の神経細胞がように興奮していることが推測され、焦点発作であることがわかります。(②どのような種類のてんかん発作かの推定

右の顔の症状なので、おそらく左の顔領域の運動野近傍あたりが焦点と思われます。(④どの部分がてんかん焦点かを推定

この時点で、てんかん病型は焦点てんかんと考えられます。(③どのような種類のてんかんだったかを推定

脳波検査で左右に中心側頭部に鋭徐波が認められましたので、てんかん症候群は「中心側頭部に棘波を持つ小児てんかん(最近では中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん)」と診断になります(③どのような種類のてんかんだったかを推定

焦点発作(焦点てんかん)に対する治療薬が有効ですが、初回のエピソードですので様子を見ることができます。(⑤治療方針・抗てんかん薬の種類が決まる)また、手術治療はまず考えなくてよいことも分かります。(⑥てんかん手術に際しての重要な情報

このように、目撃者からの発作情報は、治療方針に直結しますので、いかに大切かがわかると思います。これは、血液検査や脳画像検査をしても診断や治療につながりません。

発作のどの時点の情報が最も大切なのでしょうか?

★発作の始まり
発作が始まったときの状態
(観察者は「何で気づいたか?」が重要)
 例)つばをぺちゃぺちゃさせるような音で気付いた
 例)急に話が止まっておかしいなと思った

★発作の経過
発作がどのように変化・進展したか
(部位:目は、顔は、手は、足は、からだの動き、表情・顔色など)
発作がどのくらいの時間続いたか

★発作後の様子
発作が落ち着いたときの状態
(言葉がでにくい、麻痺の部位、もうろうとしていた など)

発作情報は正確に伝えるには、どのようにしたらよいでしょうか?

発作状況については、「記憶」を頼りに伝えられる場合もありますが、記憶は時間とともに薄れていきますので、しばしば正確性に欠きます。またメモなどの「記録」では、文字や文章から思い描く“発作症状”は、人それぞれ異なるため、正確に共有することは困難といえます。このような時に役立つのが、「発作動画の記録」です。動画情報は4次元的な情報と言えるので、発作動画があれば情報量は格段に増します。約30秒の動画は原稿用紙1枚の情報量に匹敵するともいわれています。まさに、百聞は一見に如かずと言えます。

さらに、動画があれば何度でも見直せ、関心のある部分に注目し確認できます。例えば、右顔がぴくぴくしていた発作動画が記録できた場合、右足はどうか、右の手はどうか、左手足や顔はどうか、目はどちらを向いていたか、など何度でも見直せて確認できます。

また、保育園・幼稚園や学校などにおいて、発作動画を一緒に確認することで、先生との情報共有がしやすくなります。「こどもにはてんかんがありますので注意してください」では、何をどのようにしたらよいかわかりません。「こどもにはこのような発作(動画供覧)が起こりえます。園生活での注意点について一緒に考えてもらってよいですか?」となれば、園や学校生活での見守り方法が工夫できたり、不要な不安の除去や過剰な制限を回避することに役立つかもしれません。

患者ご家族とてんかん専門医の声から生まれたアプリ

nanacara(ナナカラ)

「スマホでもっと簡単にてんかん発作を記録できたら、診療の役にも立つし、日々のケアや生活にゆとりを持ってのぞめるかもしれない」

2018年1月、患者ご家族とてんかん専門医の会話からプロジェクトがスタートし、延べ100名以上のてんかん患者さんとそのご家族、またWEPiLiを監修している大阪市立総合医療センター 小児脳神経内科の先生とディスカッションを重ねて作ったてんかんと一緒に暮らすための記録アプリがあります。

nanacara(ナナカラ)は、てんかんをお持ちのお子さんとそのご家族が、服薬状況や発作頻度など日々の記録を共有・管理ができるスマートフォンアプリです。
発作時にはワンタップですぐに記録が開始でき、動画やタイマー、メモなどの詳細な発作記録もできます。

動画撮影時のポイント

発作時に冷静に動画を撮影するのはなかなか難しいかと思いますが、できれば以下のようなポイントをおさえてもらえると、より正確に多くの情報が伝わると思います。特に注目してほしいポイントは、大きく以下の3つに分けられます。最も重要なものは1です。睡眠中や本人のそばにいない場合は、1から観察が困難な場合が少なくありませんが、2や3ももちろん重要な情報です。

  1. 全体像(頭のてっぺんから足の先まで)を正面から撮る
    自分が注目してほしいところ(白目をむいている顔、ガクガクしている右手など)をアップにして撮影しがちですが、それ以外の部分の情報が大切である場合もあります。頭のてっぺんから足の先まで、全身が映るように撮影してください。最近は動画の解像度も上がっているので、全体像さえあれば、あとで細かい部分まで観察できることが多いです。

  2. できるだけお子さんとカメラの間にさえぎるものが無いようにする
    布団をかぶっていたりして体の一部が見えないと、発作の把握に大切な情報(足にも力が入っていたかなど)が分からないことがあります。撮影の際には布団をめくるなど、できるだけお子さんとカメラの間に遮るものがないようにしましょう。

  3. できるだけ画面が揺れないようにする
    撮影時には、ある程度画面を固定した状態のほうが見やすいですね。

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