発作がおきました。どのような対応をすればよいのでしょうか?
対応にはいくつかの注意点(発作中にできればやっておきたいこと、絶対にしてはいけないこと)があります。
1. 発作中にできればやっておきたいこと
1.まずは落ち着く
お子さんの発作を目撃すると、ほとんどの方が慌ててしまうと思いますが、まずは自分を落ち着かせるように努力してください。
2.安全を確保する
- 危険物は遠ざける
- 頭の下にクッションをおく
- メガネ、ヘアピンなど、怪我をする危険のあるものを外す
など
3.楽な姿勢にする
- 衣服を緩める
- メガネをはずす
など
4.発作を観察する
記憶・記載(メモ)・記録(動画)で発作の様子を残してください。スマートフォンなどでの動画の記録は、何度も繰り返し見ることができ、医療者が重視している発作の症状に注目して見直すことができます。
発作を冷静に観察するのは難しいことですが、医療者が発作を目撃することができるケースは非常に少なく、発作時に介助した方の目撃情報が診断・治療に直結する場合があるので大変重要です。
5.発作直後の対応
- 吐物で窒息しないよう、顔を横に向け、図のような姿勢で横にする。
- もうろう状態となることがあるので、しばらく見守る。
- 眠ってしまったときはそのまま寝かせておく。
- 普段通りに戻るまで目を離さない。
2. 絶対にしてはいけないこと
口の中のものをかき出さない!
指をかまれることがあります。前傾姿勢や顔を横に向けることで、窒息を回避できます。
口に物を入れない!
口の中や歯を傷つけたり、窒息したりすることがあります。
意識が回復する前に、口から薬や水分などをとらせない!
誤嚥(食べ物が気管に入ってしまうこと)することがあります。
体を揺さぶらない!
意識がないときに無理に揺さぶるとケガをすることがあります。
発作が起きたら救急車を呼んでもいいですか?
通常、「けいれん」「ひきつけ」など発作は数分以内におさまり、ほとんどの発作は救急の医療処置を必要としません。
しかし、以下のような場合は、救急対応が必要な可能性がありますので、救急車を呼んでください。お子さんの発作の状態によってはこの限りではありませんので、この判断基準でよいかどうか、一度主治医に確認しておいてください。
- 5分たっても、全身のけいれん発作がおさまる気配がない場合
- 発作が頻発する(意識が回復しないうちに次の発作がおこる)場合
- 顔色が悪く、呼吸が不規則な状態が続く場合
- 頭部打撲後に意識がない、怪我による出血が止まらない場合
- 不安でどうして良いか分からない場合
「てんかんで〇〇病院に通院中です。発作はすでに〇分以上で止まる気配がありません。救急搬送お願いします」と要点を伝えて下さい。搬送時に、病気の状況やかかっている病院を救急隊へ伝えましょう。
発作時、何をどのように記録したらいいですか?
診察で動画を見せる際に、他にないの?正面からは?など言われますが、具体的にどうすればいいでしょうか。
発作時に冷静に動画を撮影するのはなかなか難しいかと思いますが、できれば以下のようなポイントをおさえてもらえると、より正確に多くの情報が伝わると思います。
特に注目してほしいポイントは、大きく以下の3つに分けられます。最も重要なものは1です。睡眠中や本人のそばにいない場合は1から観察が困難な場合が少なくありませんが、2や3ももちろん重要な情報です。
1. 発作の始まり
発作が始まったときの状態(観察者は「何で気づいたか?」が重要)
例)つばをぺちゃぺちゃさせるような音で気付いた
例)急に話が止まっておかしいなと思った
など
2. 発作の経過
- 発作がどのように変化・進展したか(部位:目は、顔は、手は、足は、からだの動き、左右差、表情・顔色など)
- 発作がどのくらいの時間続いたか
余裕があるときは、手足の関節が容易に曲げ伸ばしできるか、話しかけて反応があるかチェックしてください。
3. 発作後の様子
発作が落ち着いたときの状態(言葉がでにくい、麻痺の部位、もうろうとしていた など)
話しかけて反応があるかチェックしてください。
動画撮影時のポイント
発作時に冷静に動画を撮影するのはなかなか難しいかと思いますが、できれば以下のようなポイントをおさえてもらえると、より正確に多くの情報が伝わると思います。特に注目してほしいポイントは、大きく以下の3つに分けられます。最も重要なものは1です。睡眠中や本人のそばにいない場合は、1から観察が困難な場合が少なくありませんが、2や3ももちろん重要な情報です。
- 全体像(頭のてっぺんから足の先まで)を正面から撮る
自分が注目してほしいところ(白目をむいている顔、ガクガクしている右手など)をアップにして撮影しがちですが、それ以外の部分の情報が大切である場合もあります。頭のてっぺんから足の先まで、全身が映るように撮影してください。最近は動画の解像度も上がっているので、全体像さえあれば、あとで細かい部分まで観察できることが多いです。 - できるだけお子さんとカメラの間にさえぎるものが無いようにする
布団をかぶっていたりして体の一部が見えないと、発作の把握に大切な情報(足にも力が入っていたかなど)が分からないことがあります。撮影の際には布団をめくるなど、できるだけお子さんとカメラの間に遮るものがないようにしましょう。 - できるだけ画面が揺れないようにする
撮影時には、ある程度画面を固定した状態のほうが見やすいですね。
患者さんによって注目してほしいところが異なる場合もあるので(例えば、目の向き、左右の手、など)、前もって主治医の先生に確認しているとよりよいですね。
動画撮影には、患者ご家族とてんかん専門医の声から生まれたアプリ
“nanacara” もぜひご活用ください。
2年ぶりに2回目の痙攣がありました。 痙攣は2分くらい。落ち着いて寝ています。病院に連れて行ったほうがいいですか?
各発作が数分以内で治まり、その後顔色悪くなく、しっかり胸が上がり呼吸をして寝ているようであれば様子をみられてよいかと思います。呼吸が不安定、顔色が悪いなどあれば救急受診されることをお勧めします。いずれにせよ翌日以降の日中に主治医に相談し、検査の相談をするようにしてください。
うちの子供は不随意運動が始まり、最後にてんかん発作が起きます。不随意運動と発作は関係ないと医師には言われますが、全く関係ないとは思えません。関係があるとしたら、発作を減らす為に不随意運動を減らす治療が効果的でしょうか?
不随意運動から始まり、明らかなてんかん発作に至るのですね。詳細にビデオ画像や長時間ビデオ脳波などで確かめたいところですね。これらの症状が、毎回同様(強弱はあっても)であれば、その不随意運動はてんかん発作の始まりである可能性があります。不随意運動はその動作の状態や種類によってさまざま名前がついています。突っ張る動作の場合は、「強直発作や焦点発作(特に前頭葉)」というてんかん発作であることも、「ジストニア」という不随意運動のこともあります。厳密な区別がつかないことも少なくありませんが、その不随意運動とされる動作がてんかん発作である(の可能性が濃厚である)場合は不随意運動の治療薬よりは抗てんかん薬が優先されることが一般的です。
発作は無い時は全く無いが一度発作が出るとそれが引き金となって何日も続きます。発作を収める方法はありますか?
ご相談いただいたように発作は一旦出始めると数日群発される方をしばしば経験します。一旦脳神経細胞が興奮しやすい状態になると、数日持続し脳神経細胞が一旦落ち着く、リセットすると発作も落ち着くような印象です。ジアゼパム内服・坐剤の屯用で落ち着くまでの時間を短縮できることもあります。試されたことがないようであれば一度ご検討ください。
経鼻栄養の注入中にてんかん発作が起きた場合ただちに止めているのですが、どのくらい様子見て注入再開して良いですか?
経鼻栄養の注入中にてんかん発作が起きた場合ただちに注入を止める理由の一つに、発作に伴う嘔吐のリスクを下げることがあります。発作に伴い嘔吐のリスクが上がるメカニズムとして、①全身に力が入ることで腹圧が上がり胃内容が逆流し嘔吐してしまう、②嘔吐を伴う発作である、③発作後に嘔吐する、の3点が挙げられます。発作後、①~③のタイミングが終わったと判断できたら、注入を再開してください。
発作中または発作後に意識のないまま動き回る場合も、チューブが外れてしまう危険を回避するために注入中断を指示することがあります。この場合、意識のないまま動き回るフェーズが終わったことを確認してから、注入を再開してください。 その他の理由で注入中断を指示されている場合もありますので、主治医の先生に一度確認しておくことをお勧めします。
ウエスト症候群と診断後、サプリルを服用し脳波異常は消失しました。 それから3ヶ月程経った頃から発作のような動きをするようになり、半年経った今は1日1回程度発作のような動きがあります。これはてんかん発作なのでしょうか?
3ヶ月経過した頃から、 入眠30分程経過後に目をパッと開け、いびきのような呼吸音が聞こえ、手足がピクっと動くような発作のようなものが10分前後続きます。 脳波検査は異常なし。 ウエスト症候群の発作とも動きは違います。 訪問看護師からは「不随意運動にも見える」と言われ、主治医からは「今のところてんかん性ではないが回数が増えれば長時間脳波を検討しましょう」と言われています。
小さなお子さんがてんかんを発症され、大変なご心配の中で過ごされていることと思います。 小児では、発達に伴い、より効率的な運動を獲得するために、大人から見ていると説明のつかない動きをすることがあります。また、睡眠ミオクローヌスのような、生理的な(誰にでもみられるような)動きもあります。
気になる動きが、急いで治療を行うべきものか、経過をみていても大丈夫かを判断するために、起こりやすい時間帯などの詳細な情報、気になる動きの動画は、非常に役立ちます。 「診療に役立つ動画の撮り方」はこちらをご覧ください。
時間経過とともに、気になる動きが減ったか増えたか、動きが大きくなってきているのか、左右どちらかがつよくなっているのか、などの情報が追加され、気になる動きの診断につながることもあります。