てんかんとコロナ



てんかん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいですか?

2020年4月30日に日本てんかん学会から出た「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針」によると現時点では、てんかん患者が新型コロナウイルスに感染しやすいということは無いようです。

「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針」の記載は以下の通りです。

“CQ1 てんかん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいか→「てんかんをもつというだけでは新型コロナウイルスに感染しやすいという根拠はない。感染した場合に重症化しやすいという根拠はない。しかし、てんかんの病因および併存症によって(免疫抑制を伴う治療中など)は感染および重症化リスクが増加することがある。」”

新型コロナウイルス感染症はてんかんを悪化させますか?

2020年4月30日に日本てんかん学会から出た「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針」によると、てんかんをもつ患者さんが感染した場合に重症化しやすいという根拠はありません。しかし、てんかんの病因および併存症によって(免疫抑制を伴う治療中など)は感染および重症化リスクが増加することがあるとされています。

また「新型コロナウイルス感染症によるてんかんの悪化については十分なデータはない。」と記載されています。現時点では、稀な状況をのぞくと、てんかんがあることで、「感染によりてんかん発作が悪化する」ということはないようです。

コロナ期の定期受診はどのようにすればよいですか?

病院やクリニックによって診療体制や流行状況によって違うと思いますが、電話再診・オンライン診療は感染機会を減らす意味では有用であると思われます。外来脳波検査については、ある程度密閉環境で行う検査ですので、新型コロナウイルス感染症が流行していて、延期可能な場合(問診および身体所見から臨床判断が可能な場合など)は、新型コロナウイルス感染症が落ち着いてからでよいかもしれません。

「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針」の記載は以下の通りです。

 “CQ4 てんかん患者の定期外来受診はどうするか「外来受診にともなう感染リスクを低減するために、受診頻度を減らすことを考慮する。電話再診・オンライン診療等の方法を可能であれば用いる。」” 

“CQ5 外来脳波検査の適応と実施はどうするか「脳波検査の必要性について各医療施設及び地域の感染に関する状況を踏まえて、各患者の脳波検査の適応を検討する。」”

もし抗てんかん薬治療中に、新型コロナウイルス感染症になった場合に注意することはありますか?

2020年4月30日に日本てんかん学会から出た「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行期におけるてんかん診療指針」によると、

“CQ9 抗てんかん薬との相互作用に注意すべき新型コロナウイルス感染症治療薬はなにか「酵素誘導薬(カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン)は一部の抗ウイルス薬と相互作用があり、抗ウイルス薬血中濃度を低下させることがあり注意を要する。アタザナビルによりベンゾジアゼピン系薬は濃度が上昇する。ファビピラビルは抗てんかん薬と相互作用がほとんどない。」”

と記載されています。新型コロナウイルス感染症の治療薬についても、どんどん変わっていくことが予想されますので一概に言えませんが、現在飲んでいる抗てんかん薬の種類によって、新型コロナウイルス感染症の治療に影響することは知っておく必要があります。

 詳しくは主治医と相談してください。

新型コロナウイルス感染症の流行で心理的な負担があります

新型コロナウイルス感染症の流行により、特に基礎疾患があるお子さんをお持ちのご家族には、大変なご心労と思われます。

てんかん患者とその家族、およびてんかんの専門医で構成する一般社団法人SAChi(サチ)プロジェクト(登記準備中)と、てんかんのお子さんをもつご家族向け発作記録アプリnanacaraを開発・運営するノックオンザドア株式会社は、てんかんがあるお子さまのご家族205名のご協力を頂き、新型コロナウイルス感染症が与える診療、生活への影響調査を実施しました。

それによると、実際に新型コロナウイルス感染症による自粛生活で、以下に該当する患者さんが統計学的有意差をもって独立しててんかん発作悪化と関連しました。この結果からは、難治例で発作が悪化している、受診の抑制や自粛生活によるストレスなどが関係しているかもしれません。1.抗てんかん薬を4剤以上内服している患者さん2.何らかの遠隔診療をすでに実施している、もしくは臨時で実施している患者さん3.感染が心配なので通院・外出・ディ・学童への通所を控えた患者さん 

実施したい治療が先送りになったり、予期せぬ副作用が懸念され投薬変更が控えられたり、などが関係しているかもしれません。流行時に保育所や児童ディサービスが活躍していたことが、数多くのご家族にとって救われたとの声を聞きます。お子さんのストレス緩和のためにも、今後は積極的な分散登校などを考慮しても良いかもしれません。

【参考】

■レポート結果

PR TIMES てんかんがある子どもと家族への影響とは?新型コロナウイルス感染症が与える診療と生活への影響調査レポート てんかん患者・家族とつくるプラットフォーム「nanacara(ナナカラ)」独自調査

■新型コロナウイルス感染症の流行後、あなた(家族)の心理的な負担

1)自分(ご家族)が感染してしまった場合、誰が子どもの世話をしてくれるのか分からず不安(83.9%) 

  • 身体障がいがあること
  • 家庭背景として兄弟多い・片親のご家族
  • 感染が心配なので通院・外出・ディ・学童への通所を控えた患者さん
  • 必要な清潔資材(除菌用アルコール・マスクなど)が手に入らず困っている患者さん
  • 子どもや家族が常に家にいるため、仕事や家事に支障がある・食料品の買い物が不便

が該当しました。

ご家族の誰かが感染した場合のお子さんの預け先のなさがあり、仮に預け先がみつかっても、お子さんを介した2次感染が懸念されることがあるのではと思います。これらは、当然の結果をいえるでしょう。

2)子どもが感染したら自分も付き添えるのか分からず不安(72.2%)

  • 医療的ケアの必要な患者さん
  • 感染が心配なので通院・外出・ディ・学童への通所を控えた患者さん
  • 必要な清潔資材(除菌用アルコール・マスクなど)が手に入らず困っている患者さん
  • 子どもや家族が常に家にいるため、仕事や家事に支障がある・食料品の買い物が不便

が該当しました。医療的ケアが必要なお子さんは、お子さんに合わせたケアが必要になることが多く、入院した場合に付き添いがないと思わぬ病状の悪化を認める場合があります。特に、てんかんのあるこどもは、突然症状(てんかん発作)が起こるため、常時気の抜けない介助が必要になる場合が多いです。医療的ケア児の付き添いに関する指針が必要とおもわれます。付き添いで入院できる体制や付き添い者(検査陰性)の健康管理に関する指針なども必要になるでしょう。

 3)救急受診がしにくくなるのではないかと不安(45.4%)

  • 抗てんかん薬を4剤以上内服している
  • 3年以上のてんかん診療をうけている
  • 医療的ケアの必要な患者さん
  • 何らかの遠隔診療をすでに実施している、もしくは臨時で実施している患者さん
  • 感染が心配なので通院・外出・ディ・学童への通所を控えた患者さん

が該当しました。てんかん治療に難渋している、また医療的ケアを必要としている患者さんほど、病状悪化の可能性が高いため救急受診ができるのかどうか心配が強いようです。

新型コロナウイルス感染症にならないように、すでに何らかの遠隔医療を導入したうえで、さらに自粛生活を強いられている状況がうかがえます。かかりつけの病院で新型コロナウイルス感染症が流行したときなどは、

COVID19の院内感染拡大を防ぐために、救急外来診療を中止せざるを得ない場合があります。入院中の患者さんは様々ながん治療や難病治療のため入院しているので、新型コロナウイルス感染症感染が命取りになる可能性があります。てんかん患者さんは急に症状がでて、症状が長引いた場合(てんかん重積)は命に関わる状態になる可能性が否定できないため、「てんかんのあるこどもの救急受診に関する病院ごとの明確なアナウンス」が必要と思われます。

▶レポートの詳細:
PR TIMES てんかんがある子どもと家族への影響とは?新型コロナウイルス感染症が与える診療と生活への影響調査レポート | てんかん患者・家族とつくるプラットフォーム「nanacara(ナナカラ)」独自調査

てんかんのある人がワクチンを打っても大丈夫なのでしょうか?​

結論から言えば、現時点では100%自信をもって「大丈夫」とは言えないですし、誰しも副反応は起こりえます。しかし、新型コロナウイルスに罹患することによる症状のしんどさ・てんかん悪化の心配・周囲への影響などを考えた場合、ワクチンの副反応は許容できる程度に少ないと考えられています。 
また、てんかん患者さんが特段に副反応が出やすい、ワクチンでてんかんが悪化するということは現時点でいわれていません。 

詳しくは、以下に日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会から出されている見解を掲載しましたので、ご覧ください。

【参考】

■「小児における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状と感染対策についての見解」

日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
2021年5月20日 

<小児の新型コロナウイルス感染症の現状> 

新型コロナウイルス感染症の流行第4波(2021年3月以降)では、COVID-19新規患者数が増加していますが、小児患者の割合はわずかな増加に留まっています。
子どもが変異新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)(以下、変異ウイルス)に感染した場合も多くが無症状から軽症で経過しています。
小児COVID-19患者の大部分は成人患者からの感染であり、第4波に入ってからも変化していません。

<学校等における感染対策>

基本的な感染対策(3密回避、適切なマスク着用、手洗いなど)の徹底が重要です。臨時休業は子どもの健やかな学びの保障や心身に影響をおよぼすため、地域一斉ではなく感染状況に応じた柔軟な対応が望まれます。

■「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」

日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
2022年1月19日

感染状況とワクチンに関する知見と、ワクチン接種の考え方が記載されています。

ワクチン接種の考え方の要点 

  • 子どもをCOVID-19から守るためには、周囲の成人へのワクチン接種が重要
  • 基礎疾患※のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待(本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談)
  • 5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある
  • 接種にあたっては、定期接種ワクチンと同様の方法で実施

※基礎疾患ですが、詳しくは小児科学会などのホームページをご参照ください。神経疾患・神経筋疾患では、脳性麻痺、難治性てんかん・神経疾患、染色体異常症、重症心身障害児・者、神経発達症(マスクの着用が困難である場合)が記載されています。また、医療的ケア児も記載されています。難治性てんかんが基礎疾患として記載されています。

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