てんかんの治療はどのようなことをするのですか?
てんかんの治療は、一般的には薬(抗てんかん薬)による治療からはじめます。問診、診察、検査結果からてんかんの診断と分類を行った後、一番効果があり、副作用が少ない内服薬を選びます(基礎疾患、年齢などを考慮します)。
その効果と副作用を説明し、同意を得られたら治療開始となります。開始後は、定期的に診察を行い、効果をみて増量しますので、日頃の発作の様子(回数や長さも)をしっかり記録しておいてください(発作記録アプリや連絡手帳を利用ください)。
内服薬は、発作の抑制が困難な場合、2~3種類を組みあわせて行うこともあります。
2〜3種類以上の適切な抗てんかん薬を使用しても発作が1年以上抑制されない場合は、てんかん外科(手術)や食事療法を検討することもあります。
詳しくは、てんかんになってから1~2年以上経過した方向けのサイト「てんかんアドバンスド」のサイトで解説しています。(専門的な内容が含まれます)
てんかんのお薬にはどのようなものがありますか?
2006年から毎年のように新しい抗てんかん薬(新規抗てんかん薬)が発売されました。それまでは、1つの薬が認可されるまで5-10年程度の時間を要しました。新規抗てんかん薬は従来薬に比べると、副作用が少ない、脳の作用部位がユニーク、などの特徴があり、従来薬に追加して使用する場合が多いです。今後もしばらく新薬の発売が続くようですので、薬の選択肢や組み合わせが増えていくことは、患者さんにとっては朗報だと思います。
てんかんのお薬には主に以下のような種類があります。
■バルプロ酸(デパケン、セレニカなど)
全般発作、焦点発作と広くてんかん発作に有効であり、第一選択として使用されることが多い薬です。低年齢での使用経験も豊富です。片頭痛をおさえるのにも効果があります。
副作用として、時にアンモニア値の上昇、肝機能の低下、血小板の低下、などがみられるため、定期的な採血が必要です。妊娠可能年齢の女性では別の薬を優先したり、量を少なめにしたりしています。
■カルバマゼピン(テグレトールなど)
焦点発作に有効であり、第一選択として使用されることが多い薬です。低年齢での使用経験も豊富です。神経痛を抑えたり、情緒面を安定させる効果もあります。発疹、眠気、肝機能の低下などがみられるため、定期的な採血が必要です。時に音階がわかりにくくなることがあります。
■レベチラセタム(イーケプラ)
焦点発作と一部の全般発作に有効で他の薬と相互作用がなく、第一選択として使用されることが多い薬です。時に肝機能の低下がみられ、定期的な採血が必要です。イライラしたり、情緒が不安定になることがあります。
■ラモトリギン(ラミクタール)
焦点発作、全般発作と幅広く有効です。錠剤しかないのですが、溶けやすく飲みやすい錠剤です。発疹・アレルギーの頻度が高めであり、注意が必要です。少量で開始し徐々に増量していくため、効果がでるまで1~2ヵ月かかります。情緒・気分を安定させる効果もあります。
他にも、いろいろな内服薬があります。今回は初期治療の薬をあげました。「抗てんかん薬ポケットブック」(三島信行監修、日本てんかん協会が診断と治療社から出版:改訂第6版を2016年12月に出版)などを参照してください。
ただし、内服薬の選択には、さまざまな要素があります。あくまで、主治医・担当医とよく相談しましょう。
風邪を引いているときの薬の服用について教えて下さい
基本的に飲んではいけない薬はありません。一部の抗生剤で内服中の抗てんかん薬の血中濃度が増減する(※)ことがあるので、かかりつけ医や主治医に相談しましょう。
※カルバペネム系抗生物質はバルプロ酸(デパケン、セレニカなど)の血中濃度を下げてしまいます。マクロライド系抗生物質は、カルバマゼピンの血中濃度を上げてしまいます。
前頭葉てんかんの診断を受けてます。 バルプロ酸ナトリウムを処方されてますが、前頭葉てんかんには適しているのですか?
前頭葉てんかんと診断されているのですね。てんかんは大きく、全般てんかんと焦点(部分)てんかん2つに分かれますので、後者に該当します。2018年のてんかん診療ガイドライン(診療する際に参考にする指針)では、バルプロ酸は第2選択薬に該当していますので、服用することは妥当と考えられます。もし、効果がない場合は、他の治療選択肢はいろいろとありますので、変更してみてもよいかもしれません。
寝入りばなのみのてんかんの場合、眠りについて15分以上発作がなければ、安心して良いのでしょうか?毎夜ドキドキしてしまい私が深く眠れず困っています。
7才女児 薬の服用なし。 12月末発症し、てんかんと診断されました。 その後、数回発作がでており、全て寝入りばな(眠って5分以内)です。 発作の種類は、大きな声を出し数秒痙攣することと泡や涎を出しながら全身に力が入ってガクガク痙攣(1〜3分)することです。
小児期にみられるてんかんの中には、入眠期(寝てまもなく)に発作が多く見られることがあります。「夜中、自分(保護者)が寝ている間に発作が出ていたらどうしよう」と思うのは当然だと思います。一緒の部屋で寝ていれば、発作の動作、何らかの声、保護者によっては「第6感みたいな、何か違和感を感じて・・・」などで、気づかれることが多いようです。比較的深く寝ている時は、発作が生じにくいといわれています。一緒の部屋で寝たり、発作が生じやすい時間帯は発作に気づくような工夫をしたりすれば、ずっと寝ずに観察する必要はないと思います。
薬を飲む時間って決めた方がいいですか?
毎日忘れず服薬している限り、内服時間が多少前後しても大事に至らないことが多いと考えます。ただし、毎日忘れずに飲むためには、服薬するタイミングを決めておく方がよいでしょう。
前頭葉てんかんと診断されて薬での治療してますが、なかなか発作が止まらないです。 他の薬に変えてもらった方がいいのか、今のままの薬を飲み続けるかどうすればいいでしょうか?
夜間の前頭葉てんかん、睡眠中の発作は日中の眠気や日常生活に影響するため心配ですね。一般的に60-70%の発作は抗てんかん薬で止まるとされていますが、一つのお薬を十分量上げた上でも発作が続くようであれば次のお薬を追加、変更されることが重要と考えます。また原因として皮質異形成(脳のしわが生まれつきうまく作れていない状態)や腫瘍などの原因がある場合には積極的にてんかん外科を考えることも重要です。
てんかんの薬を服用していますが、効果がないようにみえます。 どの程度の期間、今の薬を継続して様子を見ると良いでしょうか?
てんかんの内服治療では、基本的には副作用に配慮して、維持量よりも少ない量から開始し、段階的に増量していきます。
増量の幅や、次に増量する までの期間は、お薬の半減期(からだに吸収され、血中の濃度が半分になる までの時間)などを参考に決められるため、お薬の種類によって違います。お薬によっては、厳密に増量の方法が決められているものや、血中濃度を確認 しながら調整することもあります。
初期量では効果がなく、増量することで効果が出てくることもありますので、今後の治療の流れを主治医の先生に確認してみましょう。