てんかんの治療
てんかんの治療はどのようなことをするのですか?
てんかんの治療は、一般的には薬の内服による治療からはじめます。医師は、お子さんのてんかんについてはもちろんのこと、生活やアレルギーの事、今までの病気や家族の病気等お聞きし(問診)、診察と検査結果(脳波等)をあわせて、てんかんの診断と分類を行います。そして、年齢や性別を加味して、お子さんのてんかんに一番効果があり、副作用が少ないと考えられる内服薬を選びます。そして、薬の効果と副作用について説明させていただき、同意をいただいた上で処方を開始します。開始後は、定期的に診察を行い、効果にあわせて増量しますので、日頃の発作の様子(回数や長さも)をしっかり記録しておいてください(nanacaraで記録していただくと効果的です)。
内服薬で発作が十分予防できなければお薬を追加し、2~3種類を組みあわせて治療することもあります。効果がほとんどないと判断した薬は減量して中止します。3種類以上の薬を試しても発作が十分予防できなければ、難治てんかんとして再検討することもあります。
てんかんのタイプや年齢によっては、内服で2~3年程度発作が完全に抑えられ、脳波も改善していれば、徐々に減量して中止することも検討します。ただし、再発するリスクはあるため医師と家族(またはお子さん本人)でよく相談することが大切と考えています。(自己判断での減量や中止は発作を誘発するリスクがあり危険なのでおやめください)
てんかんの治療に使う代表的な内服薬を以下に記載します。
バルプロ酸(デパケン、セレニカなど)
全般発作、焦点発作と広くてんかん発作に有効であり、第一選択として使用されることが多い薬です。低年齢での使用経験も豊富です。片頭痛をおさえるのにも効果があります。副作用として、時にアンモニア値の上昇、肝機能の低下、血小板の低下、などがみられるため、定期的な採血が必要です。妊娠可能年齢の女性では別の薬を優先したり、量を少なめにしたりしています。
カルバマゼピン(テグレトールなど)
焦点発作に有効であり、第一選択として使用されることが多い薬です。低年齢での使用経験も豊富です。神経痛を抑えたり、情緒面を安定させる効果もあります。発疹、眠気、肝機能の低下などがみられるため、定期的な採血が必要です。時に音階がわかりにくくなることがあります。
レベチラセタム(イーケプラ)
焦点発作と一部の全般発作に有効で他の薬と相互作用がなく、第一選択として使用されることが多い薬です。時に肝機能の低下がみられ、定期的な採血が必要です。イライラしたり、情緒が不安定になることがあります。
ラモトリギン(ラミクタール)
焦点発作、全般発作と幅広く有効です。錠剤しかないのですが、溶けやすく飲みやすい錠剤です。発疹・アレルギーの頻度が高めであり、注意が必要です。少量で開始し徐々に増量していくため、効果がでるまで1~2ヵ月かかります。情緒・気分を安定させる効果もあります。
他にも、いろいろな内服薬があります。今回は初期治療の薬をあげました。「抗てんかん薬ポケットブック」(三島信行監修、日本てんかん協会が診断と治療社から出版:改訂第6版を2016年12月に出版)などを参照してください。ただし、内服薬の選択には、さまざまな要素があります。あくまで、主治医・担当医とよく相談しましょう。
難治てんかんの場合はどのように対処しますか?
丁寧に検査を行い、内服薬の整理・調整を行います。適切な時期に適切なてんかん外科を行うことで、脳の機能をできるだけ温存しながら、発作の消失・緩和を目指せる場合があります。脳は大変繊細な器官である一方ですばらしい可塑性、柔軟性を有しています。
内服薬の整理・調整
内服薬の種類や量を調整することで、発作や副作用が軽減することがあります。
食事療法(ケトン食)
一部のてんかんで有効です。入院の上開始し、栄養士さんと相談しながら継続します。
砂糖・米・パン・パスタを制限し、卵・油・マヨネーズを上手に使います。
てんかん外科手術
漫然と内服治療を継続するのは好ましくなく、てんかん外科の適応について慎重に検討します。
代表的なてんかん外科手術の種類とその実際を図にお示しします。
①焦点切除術
発作の原因となっているところ(てんかん焦点)を切除します。半球、前方/後方離断では、てんかん焦点が広範に存在する場合、広く脳を離断(切除、摘出するのではなく、連絡を断ち切る)します。
②脳梁離断術
てんかん波の広がりを抑制する手術です。てんかん焦点自体は残るため、発作は残ることが多いですが程度が軽く、頻度が少なくなることが多いです。手術後てんかん焦点が左右どちらかの脳に局在することで①の手術を検討できることがあります。
③迷走神経刺激療法
てんかん発作を緩和する作用のある迷走神経に電気的な刺激を与える装置を埋め込む手術です。
発作が軽く、短くなることが多いです。また、感情面が安定したり、覚醒度が上がり、学業に集中しやすくなることがあります。