熱性けいれん、泣き入りひきつけのまとめ

実際にお子さんにけいれん(ひきつけ)がみられて、それが「てんかん」ではないのか心配されている保護者の方(又はご親戚の方、先生方)へ

乳児や幼児の時には、高い熱(特に38度以上)、激しく泣いた時、入浴の時、下痢の時、にけいれん(ひきつけ)が生じやすいとされています。これはそれぞれ、「熱性けいれん(熱のひきつけ)」「憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)」「入浴時けいれん」「下痢に伴うけいれん」というけいれんであることが多く、お子さんの未熟性や体質によるものが原因ではないかとされています。わが子がけいれん(ひきつけ)をおこしているのを経験されると、親は非常に驚き、そして心配される事だと思いますが、けいれんは短時間で収まることが多く、大きくなれば特に問題なく過ごされることが多いとされています。

ただし、この中に「てんかん」発作が混じっている事があります。どの病気もそうなのですが、最初は病気と区別がつかないことがみられるため、時には慎重な対応が必要です。 以下のうちお子さんが当てはまられる項目について読んでみてください。(質問があれば、おしえて!ジョウくんから連絡くだされば、多いものから順にHP内で回答させていただきます)

*目次

①けいれん、ひきつけ、てんかん、は何がありますか?

②熱性けいれんにはどのような定義がありますか?

➂熱性けいれんにはどのような種類がありますか?

④熱性けいれんの原因には何がありますか?

⑤熱性けいれんにはどのような検査が必要でしょうか?

⑥熱性けいれんの治療について教えてください

⑦熱性けいれんの予防はいつまで続ける必要がありますか?

⑧熱性けいれんは治りますか?後遺症を残すことはありませんか?

⑨熱性けいれんとてんかんの関係について教えてください

⑩その他、熱性けいれんがある場合に気をつけることはありますか?

⑪泣き入りひきつけ・憤怒けいれん

①けいれん、ひきつけ、てんかん、は何が違うの?

似た意味で使用されることも少なくありませんが、大まかには以下のように使い分けられています。

けいれん
自分の意思とは無関係に、突然手や足や全身の筋肉が収縮し、硬直させる状態

ひきつけ
「けいれん」と同じ意味で使われ、一般的には「こども」のけいれんに使うことが多い

てんかん発作
大脳の神経細胞が異常な興奮を起こすことにより引き起こされる一過性の神経症状で、「ひきつけ・けいれん」だけがてんかん発作ではなく、「ボーっとするだけ」「力がぬける」「急に思考停止する」「急に視界がぼやける」「口をもぐもぐさせる」「急に目がよる」・・・・・などなど症状は多彩です。

てんかん
(原則として)非誘発性のてんかん発作を繰り返す、または繰り返す可能性が高い慢性神経疾患

 

②熱性けいれんにはどのような定義がありますか?

熱性けいれんガイドライン2015には、「主に生後6-60か月(満5歳)までの乳幼児期に起こる、通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他明らかな発作の原因が見られないもので、てんかんの既往のあるものは除外される。」とあります。約30%以上で複数回の熱性けいれんを認めます。5歳以降に、上記と同様の発作を認めた場合にも、熱性けいれんとしての対応でよいとされています。

 

➂熱性けいれんにはどのような種類がありますか?

熱性けいれんで最も多いパターンは、「かぜなどの発熱に伴い、全身が左右差なくがくがくさせるもので、数分程度で自然に止まるもの」です。一方、「15分以上の長い発作」「目だけ、体の一部だけ、右半身だけ、左半身だけ(焦点発作の要素)」「24時間以内に複数回(一発熱機会内)」の、どれか1項目でも当てはまる場合は、「複雑型熱性けいれん」と呼ばれています。1項目も当てはまらないものを「単純型熱性けいれん」と呼ばれています。

また熱性けいれんにおいて長時間持続する発作、または複数の発作でその間に脳機能が回復しないものを「熱性けいれん重積状態」と呼ばれています。「30分以上」とされることが多いですが、5分以上持続していると、薬物治療が必要であることから、「5分以上」とする場合もあります。

 

④熱性けいれんの原因には何がありますか?

詳しいことはまだわかっていません。発熱をきたす感染症は何でも熱性けいれんが起こりますが、特にインフルエンザ(インフルエンザウイルスの感染)や突発性発疹(HHV6HHV7の感染)の経過中に生じることが多いです。一方、家族や親戚のなかに、「こどものときに同じような熱性けいれんがあった」など熱性けいれんの既往がある場合も少なくありません。神経細胞の表面にある、NaチャネルやGABA受容体などの神経伝達に関連した設計図(遺伝子)にすこし変化が認められる、などの報告もあります。

 

⑤熱性けいれんにはどのような検査が必要でしょうか?

一般的には、問診を行い、その経過が「単純型熱性けいれん」でまず間違いない場合は、特に緊急の検査は必要ありません。さらに緊急治療も必要ありません。一方で、意識状態が悪い、脱水がある、などの場合は、状態に応じた検査や治療が必要になります。「複雑型熱性けいれん」「熱性けいれん重積状態」の一部では、脳炎・髄膜炎(脳やその周囲に細菌やウイルスが感染すること)の可能性があるため、血液検査、髄液検査、頭部CTMRI、脳波検査などが必要になる場合があります。

 

⑥熱性けいれんの治療について教えてください

熱性けいれんを直接治す手段はありませんが、予防する方法はあります。発熱時にジアゼパム坐薬を使用する方法です。持続時間が長い発作があった場合、2回以上反復した場合などで、ジアゼパム坐薬による熱性けいれんの予防を検討します。発熱が続いている場合では、8時間後に同じ量の坐薬を使用します。そうすると1回目に使用してから24時間は発作を抑制する効果が続きます。

しかし、ジアゼパム坐薬での予防をしたにもかかわらず、熱性けいれんが複数回生じた場合や持続時間の長い発作が生じた場合などでは、抗てんかん薬の毎日の内服が薦められる場合があります。例えば、高潮(熱により発作が起きようとする状態)に対して、土のうを積む(ジアゼパム坐薬でしのぐ)、仮説堤防を立てる(抗てんかん薬の内服)ようなイメージです。

 

⑦熱性けいれんの予防はいつまで続ける必要がありますか?

神経細胞が年齢とともに発達し、熱に対して強くなるため、徐々に熱性けいれんの頻度は減少します。特に6歳以降では随分下がります。最終の熱性けいれんから、1-2年もしくは4-5歳頃まで続けることが薦められていますが、状況によります。

 

⑧熱性けいれんは治りますか?後遺症を残すことはありませんか?

熱性けいれんは大部分が“治癒”します。稀に、熱性けいれん重積時に「海馬」と呼ばれる脳の記憶を生み出す構造が傷ついてしまい、後にてんかんの原因となることがあります。またウイルス感染時に熱性けいれん重積状態となり、けいれん重積型(2相性)急性脳症と呼ばれる急性脳症に罹患し、後遺症を残すことがあります。

以上から、熱性けいれんを予防する、特に重積状態にならないように予防することは大切と考えられています。

 

⑨熱性けいれんとてんかんの関係について教えてください

熱性けいれんのあるこどもでは、後にてんかん(熱など誘因がなく、けいれん発作などの発作を繰り返す状態)がでてくる場合があります。てんかん発症の頻度は、単純型熱性けいれんでは1%、複雑型熱性けいれんでは2-7.5%(てんかんの家族歴や神経系の異常があれば高くなる)と言われています。逆にいうと、90%以上でてんかんを認めないともいえます。

しかし、発症するてんかんの種類は、その大部分が小児期の自然収束性のてんかん(大部分で治癒が期待できる)と言われています。また上述した、けいれん重積により傷ついた海馬が原因となる海馬硬化症(内側側頭葉てんかん)となった場合は、抗てんかん薬ではなかなか発作が消失しませんが、てんかん外科手術で治癒する可能性が高い(80%以上)とされています。

 

⑩その他、熱性けいれんがある場合に気をつけることはありますか?

・ジアゼパム坐薬の副作用は、鎮静やふらつきなどです。特に、使用後ではふらつきによる転倒や、鎮静が効き過ぎて深く寝てしまうことなどに注意が必要です。

・気管支拡張薬(キサンチン製剤)や鎮静性ヒスタミン(特に第一世代と呼ばれる鎮静作用の強いもの)は、熱性けいれんの持続時間を長くする可能性があり、特に乳児での使用はあまり薦められていません。

・解熱薬は風邪などの症状を緩和させるのに有用です。解熱薬使用後の熱の再上昇で熱性けいれんが再発するということがいわれていたこともありましたが、十分な根拠はありません。解熱薬使用により熱性けいれんが予防できるとはされていませんが、有効であるとする報告もあります。

・予防接種は、現行のものは全て行ってもよいとされていますが、予防接種の種類によっては発熱を来しやすいものがあるため一定の注意は必要です。

 

⑪泣き入りひきつけ・憤怒けいれん

泣き入りひきつけ・憤怒けいれんとは?

乳幼児(6カ月-6歳)によく起こります。激しく泣いて息をこらえ、全身を硬直させて首や背中を反り返らせて、チアノーゼ(体内の酸素が不足して皮膚や粘膜が青紫色になる)となり、その後、全身をがくがくさせるひきつけ(けいれん)を伴います。また、急に顔面蒼白(体内の血流が不足して青白になる)になるパターンもあります。怒り・不満・痛みなどが誘因となります。

泣き入りひきつけには治療がありますか?

基本的には治療する必要はありません。しかし頻度が多かったり、ひきつけ(けいれん)に至るような場合では、鉄剤や漢方(甘麦大棗湯など)が有効であったりします。ことばなどで要求を自己表現できるようになると、泣く機会が減り、泣く時間が短くなることで、自然になくなることがほとんどです。基本的には後遺症を残すようなことはありません(極めて稀ですが、頻度が多い、けいれんが重積するなどの場合があります)。

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